講演情報
[R22-4]横行結腸癌に対する術式選択における腸管長の意義とZone分類による縫合不全リスク評価
佐伯 崇史1,3, 安井 昌義2,3, 森 良太3, 北風 雅俊3, 三代 雅明3, 末田 聖倫3, 賀川 義規3, 西村 潤一3 (1.大阪大学医学部附属病院消化器外科, 2.関西労災病院消化器外科, 3.大阪国際がんセンター消化器外科)
【背景】横行結腸癌における術式選択では, 腸管長などの解剖学的因子を考慮する術者が多いが, 腸管長が術後合併症に与える影響を評価した報告はない. 本研究では, 横行結腸の腸管長と術式, 縫合不全との関連を検討した. 【方法】2008-2024年に当院で右半結腸切除(以下RHC, n=95)または横行結腸部分切除(以下TC, n=81)を施行した176例を後方視的に比較検討した. 腸管長の簡便な評価法としてZone分類を導入した. Zone分類では, CTの矢状断および冠状断像を用いて, 恥骨から肝彎曲部までの体腔内距離を頭尾側方向に4等分し, 頭側から順にZone1〜4に区分した. 横行結腸間膜の下端が属する位置に応じて分類することで, 腸管長を簡易的に評価した. 両術式の短期成績を, 全集団およびサブグループ(Zone1, non-Zone1)で評価した. 【結果】全集団ではTC群で縫合不全率が有意に高かった(RHC/TC:1例(5.6%)/6例(22.7%), p=0.049). サブグループ別の縫合不全率は, Zone1(RHC/TC:1例(2.8%)/5例(23.8%), p=0.022), non-Zone1(RHC/TC:0例(0%)/1例(1.7%), p=1.00)であり, Zone1ではTC群で有意に高値を示した. その他の術後合併症は, 全集団および各サブグループで両群間に有意差はなかった. 【結論】横行結腸の腸管長が短い症例では, 横行結腸部分切除術により縫合不全のリスクが上昇するため, 術式選択には慎重な判断が求められる. 一方, 腸管長が十分な症例では, 両術式の短期成績に差はなく, 腫瘍学的因子や臓器温存の観点を踏まえた柔軟な術式選択が可能と考えられる.