講演情報

[R22-6]縫合不全手術時における術中内視鏡併用ドレナージ術の有用性

高木 忠隆1, 小山 文一1,2, 岩佐 陽介1,2, 藤本 浩輔1, 田村 昂1, 江尻 剛気1, 吉川 千尋1, 庄 雅之1 (1.奈良県立医科大学付属病院消化器・総合外科, 2.奈良県立医科大学付属病院中央内視鏡部)
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【背景と目的】縫合不全は大腸手術における重篤な合併症の一つであり,その対策は非常に重要である.縫合不全に対する再手術時には腹腔内ドレナージ術が必要となるが,術後も炎症反応が遅延し治癒に難渋することがある.当科では術中内視鏡を用いて縫合不全部を確認し,腸管内からも洗浄することで縫合不全部を十分に洗浄ドレナージしている.また口側腸管に便が貯留している場合は,同部も洗浄を行なっている.これまで縫合不全手術時における術中内視鏡についての報告はないため,その有用性を検討した.
【対象と方法】2014年1月〜2025年1月までに当科にてS状結腸・直腸切除術後の腹膜炎を伴う縫合不全にて手術施行した32例を対象とした.
【結果】術中内視鏡を施行したのは4例(12.5%)であった.両群間で年齢,性別また腫瘍学的因子について差を認めなかった.術式については腹腔鏡下/開腹ドレナージ術が対象群で13/15例(46/54%),術中内視鏡群(IE群)で4/0例(100/0%)であった.術前・POD1・3・5のWBC値に差はなかったが,POD7値はIE群で有意に低かった(104 vs. 70, P=0.024).術前・POD1・5のCRP値に差はなかったが,POD3・7値はIE群で有意に低かった(POD3; 13 vs. 6.2 mg/L, P=0.009, POD7; 6.6 vs. 2.4 mg/L, P=0.008). WBC正常化までの期間(10 vs. 3 days, P<0.001),CRP正常化までの期間(20 vs. 10 days, P=0.005), 入院期間(41 vs. 21 days, P=0.023)はIE群で有意に短かった.術後3日以内のWBC正常化に関するリスク因子を検討すると,多変量解析にて術中内視鏡の有無(Odds ratio; 22.5, P=0.016),術前WBC<110(Odds ratio; 7.5, P = 0.049)が独立した因子であった.
【結語】S状結腸・直腸切除術後の縫合不全手術時に術中内視鏡を使用することで,速やかな炎症反応の鎮静化を認めた.術中内視鏡は腹腔内と腸管内の十分な洗浄ドレナージ効果があり有用であると考えられた.