講演情報

[R23-2]腹膜播種を伴う有症状の切除不能大腸癌に対する外科的治療戦略の検討

谷田部 悠介, 笠井 俊輔, 塩見 明生, 眞部 祥一, 田中 佑典, 小嶋 忠浩, 井垣 尊弘, 森 千浩, 髙嶋 祐助, 石黒 哲史, 坂井 義博, 辻尾 元, 横山 希生人, 八尾 健太, 小林 尚輝, 山本 祥馬 (静岡県立静岡がんセンター)
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【背景】大腸癌治療ガイドラインでは切除不能な遠隔転移を有する有症状の大腸癌に対して、過大侵襲とならない切除であれば、原発巣を切除して全身薬物療法を行うことを強く推奨している。当科ではガイドライン通り原発巣切除を第一選択としつつも、他臓器浸潤、下部直腸癌、手術リスクを有する患者には人工肛門造設術やバイパス術+薬物療法を考慮している。しかし、外科的介入が必要な原発巣による症状がある症例に対して原発巣を残して薬物療法を行う場合の治療成績を検討した報告は少ない。
【目的】腹膜播種を有する有症状の切除不能大腸癌において原発巣非切除+薬物療法の短期・長期成績を原発巣切除+薬物療法と比較し検討すること。
【方法】2006年から2021年までに、同時性腹膜播種を有する有症状(閉塞/出血)の切除不能大腸腺癌に対して当科で手術を行った患者のうち、術後に当院で薬物療法を受けなかった患者、潰瘍性大腸炎関連大腸癌、重複癌を除いた症例を解析対象とした。対象の患者について診療録から後ろ向きに患者背景、手術所見、病理所見、術後経過を抽出した。原発巣切除の有無で切除群と非切除群の2群に分け、比較検討した。
【結果】対象患者は切除群35例、非切除群38例であった。非切除群は切除群と比べて有意に男性、ECOG-PSが高い症例、直腸癌が多かった。手術時間の中央値は切除群が164分、非切除群が61分 (p<0.001)。切除群のうち1例はハルトマン手術で人工肛門を要し、非切除群はバイパス術を行った1例を除く37例で人工肛門を造設した。手術から初回薬物療法までの期間は31日vs.23日 (p<0.001)。術後合併症は2群間に差はなかった。生存期間の中央値は切除群26か月、非切除群で18か月 (p=0.36)と有意差はなかった。生存期間に対する多変量解析ではASA-PS≥3, 低分化癌、T4bが独立したリスク因子であった。
【結論】選択された症例においては、原発巣切除は原発巣非切除と比べて薬物療法開始の遅れは限定的であり、手術の第一選択として妥当と考えられた。一方で原発巣非切除は原発巣切除と比較して長期予後を悪化させず、個々の患者の手術リスクを鑑みて治療選択肢となりうると考えらえた。