講演情報

[R23-3]原発巣切除を施行したStage IV大腸癌における治療成績および予後に遠隔転移巣が及ぼす影響についての検討

杉浦 清昭1, 加藤 達樹1, 青山 純也1, 大島 剛1, 菊池 弘人2, 岡林 剛史3, 愛甲 聡1, 北川 雄光3 (1.永寿総合病院, 2.川崎市立川崎病院一般・消化器外科, 3.慶應義塾大学医学部一般・消化器外科)
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背景
本邦においてはJCOG1007試験の結果、切除不能な遠隔転移を伴うstageIVに対する原発巣切除(Primary tumor resection : PTR)は無症状の場合に積極的には勧められなくなった。しかしStage IV大腸癌はその遠隔転移の状態によって予後が異なり、PTRの有用性はいまだ明らかではないのが現状である。今回われわれは、多施設データベースを用いて、PTRを施行したstage IV大腸癌における治療成績および予後に遠隔転移巣が及ぼす影響を検討することを目的とした。

方法
慶應義塾大学病院およびその関連施設で作成されたKeio Surveillance Epidemiology and End Results : K-SEER データベースから、2015年1月から2017年12月の間にPTRを施行したStage IV大腸癌症例342例を抽出し後方視的に解析した。解析項目は全生存(Overall Survival : OS)と癌特異的生存(Cancer-Specific Survival : CSS)とした。多変量解析および生存解析を用いてStageIV大腸癌症例のPTR後の成績および予後因子を検討した。
結果
対象症例のうち、原発巣の内訳は右側結腸癌121例(35.4%), 左側結腸癌117例(34.2%), 直腸癌104例(30.4%)であった。単一臓器転移は225例(65.8%)に、多臓器転移は117例(34.2%)にそれぞれ認められた。肝転移は249例(72.8%)、肺転移は110例(32.2%)、腹膜播種は67例(19.6)%にそれぞれ認めた。3-year OS, 3-year CSSはそれぞれ43.3%, 47.87%であった。多変量解析では、OSおよびCSSの双方において、組織型 (OS; HR 2.740, 1.503-4.993, p = 0.001, CSS; HR 2.278, 1.120-4.634, p = 0.023)、PTR後の化学療法の有無(OS; HR 0.450, 0.329-0.616, p < 0.001, CSS; HR 0.418, 0.300-0.584, p < 0.001)、PTR後の遠隔転移巣切除(OS; HR 0.332, 0.142-0.774, p = 0.011, CSS; HR 0.290, 0.115-0.731, p = 0.009)、多臓器転移(OS; HR 2.175, 1.387-3.413, p = 0.001, CSS; HR 2.506, 1.551-4.047, p <0.001)が有意な予後因子であった。
結語
Stage IV大腸癌においては, 化学療法や根治性に加えて、組織型や転移臓器数を勘案した上でPTRの適応を検討することが必要である可能性が示唆された。今後更なる症例の集積が必要である。