講演情報

[R23-4]大腸癌腹膜転移に対する完全減量切除と術中腹腔内温熱化学療法

武内 寛, 合田 良政, 北山 丈二, 佐藤 一仁, 大谷 研介, 清松 知充 (国立国際医療センター病院)
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【はじめに】本邦のガイドラインでは、大腸癌腹膜転移に対する外科的切除が推奨されており、「切除に意味はない」とされていた時代から、積極的切除へと方針が変化しつつある。欧米では、完全減量切除(CRS)と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を組み合わせた積極的治療の有効性が報告されてきたが、HIPECの併用に関しては依然として賛否が分かれている。
【目的】大腸癌腹膜転移に対するCRS+HIPECの治療成績を検討する。
【対象と方法】2010年から2017年に大腸癌腹膜転移と診断され、CRS+HIPECを施行した44例を対象とした。虫垂癌は含むが、腹膜偽粘液腫および腹膜以外に遠隔転移を有する症例は除外した。完全減量切除はSugarbaker’s techniqueに準じて行い、MMCまたはl-OHPを用いてHIPECを施行した。
【結果】男性17例、女性27例、年齢中央値は54歳(22~76)。原発部位は右側結腸17例、左側結腸11例、直腸5例、虫垂11例。腹膜転移の発生時期は同時性19例、異時性25例。組織型は管状腺癌30例、粘液癌8例、印環細胞癌5例、杯細胞カルチノイド1例。全例に全身化学療法を施行し、29例(66%)にはパクリタキセルの腹腔内投与を併用。Peritoneal Cancer Index(PCI)スコアは中央値7、手術時間10時間、出血量452ml、3例を除き輸血を要した(いずれも中央値)。術後合併症はClavien-Dindo分類でGrade III以上が7例(16%)。術後死亡はなく、入院期間は中央値22日。再発は37例(84%)に認められ、うち29例(80%)は腹膜。5年全生存率は50%、5年無再発生存率は19%であった。PRODIGE 7試験と比較すると、合併症の発生率はCRS単独群と同程度で、予後はCRS+HIPEC群の方が良好であった。
【結語】本邦では、従来より播種巣切除のみによる治癒切除が一般的である。播種巣切除とCRSのいずれを選択すべきか、またHIPECを併用すべきかについては、現時点で明確な結論は得られていない。エビデンスはまだ限られているものの、CRS+HIPECを実施してきた立場からは、本治療法は決して敬遠すべきものではないと考える。今後は、本邦においても適切な患者選択のもとで、臨床研究を通じて治療の有用性を検証していく必要がある。