講演情報

[R23-6]直腸癌局所再発に対する陽子線治療において部分奏功が与えるインパクト

山本 誠也1,2, 髙橋 広城1,2, 山本 真也1,2, 植松 宏1,2, 齋藤 正樹1,2, 安藤 菜奈子1,2, 前田 祐三1,2, 大久保 友貴1,2, 三井 章1,2, 山川 雄士1, 瀧口 修司1 (1.名古屋市立大学大学院医学研究科消化器外科学, 2.名古屋市立大学医学部附属西部医療センター)
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【背景】
直腸癌局所再発に対する治療として、外科的切除が困難な症例において陽子線治療は有効な選択肢となりうる。しかし、陽子線治療後の長期予後や局所制御率に関する詳細な報告は限られている。今回我々は、陽子線治療を行った42例の局所再発直腸癌症例のうち、初回の効果判定でpartial responseを示した7例について解析を行った。
【対象と方法】
2014年から2023年に当院で陽子線治療を施行した局所再発直腸癌42例のうち、初回効果判定でPRを示した7例を対象とした。生存期間、再発の有無(照射野内再発、遠隔転移、リンパ節再発)、および観察期間を検討した。放射線量は72Gy/20Frを基本としている。
【結果】
7例全例が現在も生存中であり、照射後の局所再発、遠隔転移、リンパ節再発はいずれも認めていない。各症例の観察期間はそれぞれ2747日、1278日、752日、1093日、776日、247日、229日であり、最長で7年6か月以上の長期観察が可能であった。いずれの症例も有害事象による治療中断やグレード3以上の晩期合併症は認めなかった。
【考察】
一般的なIMRTなどの放射線治療では腸管などへの影響から照射できる線量に限りがあるのに対して、陽子線はブラッグピークでエネルギーを放出するという特徴から周囲臓器への影響が少なく、腹腔内においても高い治療効果を得ることができるとされる。今回の7例では、初回の画像効果判定でPRにとどまったものの、長期的に良好な予後を得ており、照射後の再発も認めていない症例もあった。薬物治療などと合わせた集学的な治療は必須であるが、陽子線治療が局所制御ならびに生存率の向上に寄与する可能性が示唆される。特に、再発に対する外科的切除が困難な症例において、根治的治療としての有用性が考えられる。
【結語】
局所再発直腸癌に対する陽子線治療は、初回判定でのPR症例において長期予後が良好であり、治療選択肢として有望である。今後はさらなる症例の集積と前向きな検証が求められる。