講演情報
[R27-1]直腸膣瘻・肛門括約筋機能不全の術後長期経過のアンケート調査報告
村上 耕一郎, 水黒 知行, 橋本 京三 (総心会長岡京病院外科)
【目的】直腸膣瘻と肛門括約筋機能不全は先天性または出産時の会陰体損傷由来の疾患群と位置づけられる。全国で年間約50例程度が新規発症するとされる希少な病態である。我々は近医と連携して会陰体修復術を行い、当院のオープン病床利用で過去30年に約400例の手術を行ってきた。従来は術後1年の外来診察で感染や再発がなければ終診としている。最近フォロー終了後の患者からの相談が数件続いたため、当院外来での診療継続案内とともに術後の状態評価を行うこととした。【方法】令和元年から五年までの術後フォロー終了患者130例についてアンケートを送付した。質問は年齢、膣瘻症状の有無、便失禁の有無、創部排膿の有無、あれば次子出産の方法についてとした。本研究は当院ウェブサイトでオプトアウトし、倫理委員会で審査認定された。【結果】送付した130件のうち、不達返送が34件、返送なしが43件であり、有効回答53件について検討した。53例中直腸膣瘻が37例、括約筋不全が16例であった。膣からのガス漏れが3例、便漏れが2例であった。いずれも膣瘻の術後症例であった。また便失禁は20例で認め、うち膣瘻術後が12例、括約筋不全術後が8例であった。また13名が術後に出産しており、3例が経膣分娩、10例が帝王切開であった。【考察】会陰体修復術後の直腸膣瘻症状の再発は3.77%であり、以前に我々が報告した再発率3.5%と大きく変わらないといえるが、便失禁症状については術前よりは改善しているものの、残存しているとの回答が38.5%に及び、満足度が十分とはいえない。骨盤底筋体操の指導やバイオフィードバックなどを含むフォロー延長を再考すべきであると思われた。一方、当院では本術式の術後は経膣分娩が可能と説明しているが、約77%が帝王切開を選択した。本人の意志のみでなく産科担当医に帝王切開を強く勧められたケースもあったため、本手術に関する情報の共有とともに、術後1年以上経過した後も気軽に相談できる体制が必要であると考えた。