講演情報

[R27-2]分娩時会陰裂傷を契機に発症した直腸膣瘻に対して外科的修復術を施行した3例

吉村 晴香, 永吉 絹子, 久野 恭子, 藤本 崇聡, 田村 公二, 水内 祐介, 中村 雅史 (九州大学医学研究院臨床腫瘍外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
症例①:33歳、女性。正期産、経膣分娩で出産、第2度会陰裂傷であった。既往に膠原病あり出産後に1か月間のステロイドパルス等の内科的治療を要した。出産後2か月半ごろから子宮の下垂感を自覚し直腸膣瘻の診断に至った。産後15か月目に修復術として経会陰的瘻孔切除、単純閉鎖および前方括約筋形成術を施行した。術後、直腸創部の微小な縫合不全が疑われ経過観察するも、経時的に直腸皮膚瘻が顕在化し術後9か月でも直腸皮膚瘻は残存していた。転医に伴い、経過観察は終了した。症例②:30歳、女性。正期産、経膣分娩で出産、第2度会陰裂傷であった。産褥13日目に膣からの便の漏出を自覚し、直腸膣瘻の診断となった。産後1か月目に修復術として経膣的瘻孔切除、膣後壁を用いたAdvancement flap(AF)による再建術、一時的回腸人工肛門造設術を施行した。修復術後3か月で人工肛門を閉鎖し、その後も再発なく経過した。症例③:28歳、女性。正期産、経膣分娩で出産、第1度会陰裂傷であった。産褥9日目より膣からの便流出を自覚し、直腸膣瘻の診断となった。出産後3か月目に修復術として経膣的に瘻孔切除、AFによる修復術を行った。術前MRI検査では瘻孔周囲や直腸膣間隙に炎症所見は指摘されなかったため、人工肛門は造設しなかった。術後排便後、直腸と膣の閉鎖創に縫合不全を認め、人工肛門造設を含めた再手術を行ったが、縫合不全部における直腸膣瘻の再発を認めた。
経膣分娩時に生じた会陰裂傷は分娩直後に縫合閉鎖されるが、時に創部が閉鎖せずに炎症を伴って進展し直腸膣間に瘻孔を形成する。膣からの便流出を認め、患者のQuality of life を著しく低下させる。直腸膣間の脆弱性を考慮した外科的修復術が求められるが患者の個体差、瘻孔周囲の炎症など個々の症例にあった術式の選択に明確な基準はない。当院で分娩時会陰裂傷を契機に発症した直腸膣瘻に対して外科的修復術を施行した3例を経験したため、若干の文献的考察をふまえて報告する。