講演情報

[R27-4]陳旧性会陰裂傷に発症した骨盤臓器脱に対し、薄筋皮弁による会陰再建および肛門形成術を施行した1例

松尾 智暁1, 木村 泰生1, 髙柳 奈央2, 辻本 賢樹2, 橋渡 七奈子1, 坂根 舜哉1, 内藤 健1, 石原 伸朗1, 田原 俊哉1, 丸山 翔子1, 秋山 真吾1, 山川 純一1, 藤田 博文1 (1.聖隷三方原病院外科, 2.聖隷三方原病院形成外科)
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症例は83歳女性。57年前の出産時の会陰裂傷により直腸膣癒合不全の状態で経過されていた。半年前より骨盤臓器脱、便失禁の症状が出現し近医を受診し、当院へ紹介された。受診時、膣と肛門の間の皮膚および括約筋が欠損し総排泄腔様となっており、怒責で骨盤臓器脱(膣脱+完全直腸脱)を認めた。肛門括約筋は前方1/3が欠損している状態であった。本症例における骨盤臓器脱の主因は第4度会陰裂傷による骨盤底欠損と考えられたため、形成外科と協議し、薄筋皮弁による会陰再建術および肛門形成術を施行した。瘢痕化した膣後壁と直腸前壁を分離し、外肛門括約筋断端を同定し周囲を剥離した。挙上した右薄筋弁を時計回りに外肛門括約筋周囲に巻き付け括約筋断端に縫着した。膣と肛門の間は会陰部の皮膚により皮弁を形成した。
骨盤臓器脱は一般的に、出産や加齢、骨盤内手術により骨盤底筋群が脆弱化し発症するとされている。また、第4度会陰裂傷は直腸粘膜まで達する稀な病態である。本症例は第4度会陰裂傷により骨盤底欠損が背景にあり、加齢と介護による腹圧の上昇に伴い骨盤臓器脱が発症したと考えられた。会陰裂傷に伴う骨盤臓器脱は非常に稀であり症例報告も数少ない。今回、我々は会陰裂傷を背景に発症した骨盤臓器脱に対して薄筋皮弁による会陰再建および肛門形成術を施行した1例を経験したため、ここに報告する。