講演情報

[R28-1]当院における大腸癌手術の化学的前処置であるカナマイシンおよびフラジール併用投与の有用性

瀧口 暢生, 三宅 正和, 吉村 大士, 東 重慶, 古川 陽菜, 小川 久貴, 大村 仁昭, 種村 匡弘 (りんくう総合医療センター)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言】本邦における2023年の下部消化管術後のSSI(Surgical Site Infection)発生率は厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の報告によると結腸8.2%, 直腸9.9%と報告されている. 結腸直腸癌手術において, SSI予防目的に化学的前処置が有効であるとされており, 当院では術前1日間の経口抗生剤を内服する化学的前処置を導入し, 2021年5月よりクリニカルパスに追加し運用を開始した. 本研究では化学的前処置のクリニカルパス導入によるSSI予防効果を明らかにする.
【対象と方法】当院では従来の機械的前処置に, 術前1日間の化学的前処置であるカナマイシン750mgとフラジール750mgを経口内服することを追加したクリニカルパスを2021年5月に導入した. クリニカルパス導入前の2015年1月から2021年4月の結腸直腸癌切除症例643例を導入前群, 導入後の2021年5月から2025年1月の492例を導入後群とし, SSI発生率についてretrospectiveに比較検討した.
【結果】導入前群と導入後群の背景因子で, 年齢, 性別, ASA-PS, BMI, Approach, ストーマ造設, 出血量, 手術時間, Stageに関して有意差は認めなかった. 全手術症例におけるSSI発生率は6.7%(76/1135例)であった. SSI発生率は導入前群5.9%(38/643例), 導入後群7.7%(38/492例)で有意差は認めなかった(P=0.14). また表層SSIは導入前群3.9%(25/643例), 導入後群3.0%(15/492例)で(P=0.52), 深部SSIは導入前群1.2%(8/643例), 導入後群1.2%(6/492例)で(P=0.83), 体腔内SSIは導入前群0.78%(5/643例), 導入後群3.5%(17/492例)(P=0.10)となっており, これらは有意差を認めなかった.
【結語】当院では結腸直腸癌手術に, 術前1日間の化学的前処置をクリニカルパスに導入し運用している. 導入前後を比較すると現状ではSSI発生率において有意差は認められなかったが, 今後も症例を蓄積していく方針である.