講演情報

[R28-2]左側大腸癌DST吻合症例に対する術前化学的腸管処置の臨床的意義の検討

高島 順平, 上野 啓輔, 大野 裕文, 南角 哲俊, 小泉 彩香, 峯崎 俊亮, 山崎 健司, 藤本 大裕, 三浦 文彦, 小林 宏寿 (帝京大学溝口病院外科)
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【背景】現在多くの施設でERASが実践される.当科でもERASにそったパスを導入し早期退院を目指した周術期管理を行っている.しかし当科ではDST吻合予定の左側大腸癌では,ERASと異なり術前2日前に入院し絶食とした上で,術前腸管処置を施行している.これにより術中内視鏡を用いて吻合部の評価およびリークテストが実施可能となる.なお当科では2019年5月より術前腸管処置に化学的腸管処置(CBP)を導入し,それ以前は機械的腸管処置(MBP)のみを実施していた.当科におけるCBPを併用した術前処置の妥当性を検討した.【検討1】2014年1月から2024年12月における左側大腸癌手術症例を対象とした.緊急手術および原発非切除症例,非吻合症例は除外した.CBP導入前(pre群)と導入後(post群)に分類し短期成績を検討した.【結果1】pre群113例/post群222例.年齢,性別などの患者背景に差なし.post群でロボット手術が多かった(p<0.001).術式はpre群:結腸部分切除71例/HAR11例/LAR30例/SLAR1例,post群:結腸部分切除86例/HAR67例/LAR60例/SLAR9例とpost群で直腸切除症例が多かった(p<0.001).手術時間はpost群で長かった(p<0.001).合併症はpre群17例/post群9例とpost群で少なかった(p=0.001).SSIはpre群10例/post群4例とpost群で少なく(p=0.006),うち体腔SSIはpre群7例/post群4例(p=0.049)、切開創SSIはpre群3例/post群0例(p=0.038)であった.肺炎や腸閉塞などは差なし.術後在院日数はpost群で短かった(p<0.001).【検討2】SSIの危険因子を検討した.【結果2】単変量解析ではMBP単独(p=0.006)と周術期輸血(p=0.022)が該当し,ステップワイズで多変量解析すると,MBP単独(OR=0.167 p=0.004)と周術期輸血(OR=0.163 p=0.006)が独立した危険因子であった.【考察】post群では合併症の発生が少なく,特に体腔SSIおよび切開創SSIが低率であった.当科の術前処置は妥当と考えられ,CBP導入によりSSIの発生率が低下する可能性が示唆された.体腔SSIに関しては術中内視鏡検査で吻合部を確認することで,ステイプル形成不全や吻合部出血などを確認でき,縫合補強も可能となることが寄与している可能性が示唆された.