講演情報

[R28-3]直腸癌手術における化学的前処置の有用性の検討

工藤 孝迪1, 小澤 真由美1, 大矢 浩貴2, 前橋 学1, 田 鐘寛2, 森 康一1, 諏訪 雄亮1, 沼田 正勝1, 諏訪 宏和3, 佐藤 勉1, 渡邉 純2,4, 遠藤 格2 (1.横浜市立大学附属市民総合医療センター, 2.横浜市立大学附属病院消化器・腫瘍外科学, 3.横須賀共済病院, 4.関西医科大学下部消化管外科学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景】直腸癌手術において、機械的前処置(MBP)に経口抗菌薬(OABP)を併用することでSSIが有意に減少することが報告されているが、日本ではOABPは保険適応外である。
【目的】直腸癌手術におけるOABP併用の有用性を後ろ向きに検討した。
【対象・方法】2017年4月~2024年12月に当科で直腸癌に対して低位前方切除術または括約筋間直腸切除術を施行した器械吻合例520例を対象とし、MBP単独群(M群)とMBP+OABP併用群(C群)を傾向スコアマッチング(交絡因子:性別、年齢、ASA-PS、BMI、PNI、糖尿病、喫煙歴)により各159例で比較した。
【結果】背景に有意差はなく、術式に差を認めた(LAR/ISR:M群131/28例、C群150/9例、p<0.001)。手術時間はC群で有意に長かった(M群238分、C群271分、p=0.03)が、出血量は差がなかった。Clavien-Dindo分類Grade 2以上の術後合併症はM群46例(28.9%)、C群31例(19.5%)(p=0.066)、縫合不全はM群15例(9.4%)、C群8例(5.0%)(p=0.193)と減少傾向を認めた。切開創SSIはM群23例(14.5%)、C群3例(1.9%)で有意に低率だった(p<0.001)。CRP値はM群:4.33/8.09/3.43,C群:3.57/5.08/2.24,(POD1/3/5)はすべてC群で有意に低値であった(p=0.001/0.002/0.007)。
【結論】MBPにOABPを併用することで、直腸癌手術後のSSIおよび炎症反応の抑制に寄与する可能性が示唆された。