講演情報

[R29-3]クローン病肛門病変の検討と新しい分類の提言

松尾 恵五, 鵜瀞 条, 新井 健広, 岡田 滋, 坪本 貴司, 吉本 恵理, 児島 和孝, 佐々木 駿 (東葛辻仲病院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】クローン病(CD)に合併する肛門病変を分析し新しい考え方の分類を提言する。
【対象】2004.1~2023.12までの20年間に当院でCDと診断しえた170例。
【方法】前向きのRetrospective Cohort studyで観察期間中央値は49か月であった。
【結果】初診時に肛門症状のあった症例は153/170(90%)、CDの確定診断は158例、疑診12例であった。観察期間内に診断した病変部位により3群に分けると肛門+腸管139例(81.8%)、肛門のみ17例(10%)、腸管のみ14例(8.2%)であり、発見時期による時間的要素も加味すると腸管のみ14例(8.2%)、腸管病変先行1例(0.6%)、同時発見129例(75.9%)、肛門病変先行9例(5.3%)、肛門のみ17例(10%)であり、肛門病変の同時発見も「肛門病変先行例」に含めれば155例(91.2%)であった。
Hughesの分類に準じた肛門病変は(重複あり)156例中、肛門潰瘍59例(37.8%)、裂肛49例(31.4%)、浮腫状皮垂35例(22.4%)、肛門ポリープ12例(7.7%)などであった。痔瘻手術121例のうち86.8%は手術時にCDの確定診断がついておらず、浅い単純痔瘻に対しては lay open法を行うことが多かった。手術例のうち3分の1が生物学的製剤を投与せずに治癒的寛解に至った。lay open法106例中の再発は1例のみであった
【提言】CDに伴う肛門病変をその部位により粘膜側病変(肛門管内病変)と皮膚側病変(肛門周囲病変)に分ける新分類を提言する。粘膜側病変はcryptitis型(従来の分類では規定されていない通常のcryptにみえるか少し大きめ・深いcrypt、あるいは軽度の炎症所見を呈する痔瘻の原発口)、fissure/ulcer, cavitating ulcer, aggressive ulceration, strictureに分類すると最多のものはcryptitis型128(82.1%)であった。皮膚側病変は(ulcerated) edematous pile, perianal abscess/fistula, vaginal fistulaに分類した。この分類により的確に粘膜側病変を評価して手術治療法選択の指標になることが期待される。