講演情報

[R29-5]肛門管内原発病変に着目したクローン病肛門病変の治療戦略

植田 剛1, 中本 貴透1, 佐井 壯謙1, 定光 ともみ2 (1.佐井胃腸科肛門科, 2.南奈良総合医療センター外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
はじめに:クローン病(CD)肛門病変は高率であるが、CD診療の大半は内科医によってなされている。CD病勢と肛門部症状が必ずしも一致せず、治療強化要否の判断に難渋することも多いため、経験症例から治療戦略を考察した。
対象:2025年4月時点で診療しているCD51例中、肛門病変合併40例。当院での薬物療法も行なっている29例、肛門のみ診療例11例を含めて検討した。肛門のみ診療例は全例主担当医が薬剤選択を行っていた。
結果:初診時または経過中に、膿瘍形成または疼痛の強い症例で、仙骨硬膜外麻酔下で診断・処置を施行した。
膿瘍形成は30例(75.0%)で、触診とUSで膿瘍範囲と一次口を検索、一次口が同定困難か確保困難な症例は無理には確保せず。一次口同定症例は約半数で、その形態にかかわらずシートンも留置した。シートンは積極的にcuttingすることなく治癒に伴い適宜抜去か脱落とした。膿瘍は広く開放するか、シートンであっても挿入口は十分な大きさを確保した。一次口がCD関連の潰瘍性病変である際は、Bio製剤を中心とした加療を要した。一次口同定困難症例は通常型肛門周囲膿瘍に近く、肛門症状での薬剤変更はなかった。
根治術は7例に施行。4例は根治術時点でCD診断はなく、lay open2例 coring out2例に施行。2例で難治創となりBio導入で創部治癒した。既診断の1例は裂肛からの瘻孔形成でlay openし、その後ステロイドで腸管、肛門とも寛解。2例はADA、USTで腸管は寛解状態にあり、瘻孔残存症例にlay open1例 coring out1例を通常痔瘻症例と同様に行い治癒した。根治術全例で一次口が歯状線か手前だった。
膿瘍形成を認めなかった10例(25.0%)は裂肛3例と狭窄3例にBio導入、浮腫状皮垂4例はそれ自体でのBio導入はなく、腸管病変の活動性に応じてBio導入した。
結語:膿瘍期はCD病変の形態にかかわらず十分なドレナージを要し、ドレナージ口を十分に作成することが肝要である。CDであっても一次口をいかに処理するかが重要であり、CD関連病変であれば、Bio製剤を中心としたCDの加療が必要である。