講演情報

[R3-5]痔核術後合併症の検討 ―11,222例の解析―

坪本 敦子, 指山 浩志, 堤 修, 黒崎 剛史, 城後 友望子, 鈴木 綾, 高野 竜太朗, 川西 輝貴, 中山 洋, 安田 卓, 小池 淳一, 浜畑 幸弘 (辻仲病院柏の葉大腸肛門外科)
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【目的】
痔核に対する外科的治療には, 結紮切除術(LE), ALTA療法, PPHなど複数の術式があり, 痔核の病態や患者の背景に応じて使い分け, あるいは併用して行われている. これらの術式はそれぞれ特徴があり, 術後合併症の種類や頻度にも差がみられることがある. なかでも再手術を要する合併症は, 患者の予後や満足度に大きく影響する. 当院において痔核手術を施行した11,222例を対象に, 術後に手術を要した合併症の頻度と内容を検討した.
【方法】
2009年6月から2025年3月までに当院で痔核手術を施行した11,222例を対象とし, 術後に手術を必要とした合併症症例を解析した. 主な対象合併症は後出血, 肛門狭窄, 創部感染に起因する痔瘻とした.
【結果】
手術を要した合併症は計411例(3.7%)に認められた. 最も多かったのは後出血で326例(2.9%)に発生し, 多くは術後5~14日目に認められ, 緊急止血術や再入院が必要となった. 肛門狭窄は38例(0.3%)にみられ, 肛門形成術を施行した. 創部感染から痔瘻へ移行した症例は47例(0.4%)で, 開放術やseton法での根治術が行われた. いずれの合併症も保存的加療では効果が乏しく, 外科的対応が不可欠であった.
【考察】
本検討により, 痔核術後に手術を要する合併症は一定の頻度で発生し, 特に後出血は最多でかつ急性期に生じるため注意が必要であることが示された. また, 肛門狭窄や痔瘻も, 術後長期にわたり患者QOLに影響を及ぼす可能性がある. 術後に手術を要した合併症の多くは, 術中操作の不適切さが一因となっている可能性がある.後出血や感染性痔瘻は, 適切な剥離層に入らず筋層に損傷を及ぼしたことで,血管や感染経路への露出が生じた可能性が考えられた. また, 狭窄に関しては, 肛門上皮の切除が過剰であったり, 複数の痔核の根部が同一高さで縫縮されることで, 輪状狭窄を引き起こしたと考えられる. これらの所見から, 合併症の予防には, 正確な解剖学的知識と丁寧な剥離・切除操作が重要であることが示唆された.