講演情報

[R4-5]骨盤臓器脱を合併する直腸脱への当院の治療戦略

松木 豪志1, 岡本 亮1, 一瀬 規子1, 古出 隆大2, 中島 隆善2, 仲本 嘉彦2, 柳 秀憲2 (1.明和病院骨盤底臓器脱センター, 2.明和病院外科)
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【はじめに】骨盤底臓器脱センターへ腸管の脱出に伴う症状を主訴として来院される方の中には骨盤臓器脱(POP)の合併を一定頻度で認めtotal repairが望まれる.当院の診断・治療方針について報告する.【診断・評価】直腸脱手術症例では耐術能検査と共に,脱出の程度と直腸の固定性の診断のため排便造影検査を,他臓器脱合併の評価として動的 MRIを行う.固定性不良で5cm以上と大きく脱出する症例では耐術能が問題なければ鏡視下前方固定術LVR(Laparoscopic ventral rectopexy)を主に行い,他臓器脱合併例ではLSC(Laparoscopic sacrocolpopexy)またはRASC(Robot-assisted sacrocolpopexy)も併施しtotal repairとしている.【手術治療】2018年1月から2024年11月までに外科で実施した直腸脱・瘤・重積症手術122例のうち,35例(28.7%)に他臓器脱の合併を認めた.内訳は併存も含め膀胱瘤が最も多く21例,次いで子宮脱を14例に認めた.年齢中央値76.5歳、75歳以上の95%でFrailtyが疑われた.75歳以上では全例に入院時から嚥下も含めたリハビリを行い平均6日間の在院中のADL低下予防に努めている.手術は32例でLSC+LVRまたはRASC+LVRの術式選択しtotal repairとした.手術は複数科合同を基本とし,尿管・膀胱損傷など他臓器損傷の危険性が高くなる骨盤底術後症例では術中所見で経腹から経会陰アプローチへ等の術式変更・追加も行っている.観察期間中央値35.8ヶ月の成績で再発症例は直腸脱のみを経会陰手術で治療した1例に認め,LSC+LVRにて再手術を行い以後再発は認めていない.【術後経過観察】術後及び保存的加療症例ではバイオフィードバック療法外来にて骨盤底筋群体操を継続する.3-6か月のパスで運用しており,術後ルーチン化した2022年以降では再発は認めていない.骨盤底機能は骨盤底困窮度質問票スコア(300点満点)で術前/術後1/3/6/12ヶ月を評価し,術後著明に改善した.【まとめ】POP は多彩な症状をもち,個別の身体・精神状況に応じた対応が必要となる.コメディカルも含めた多様性のあるチームによる個別化治療戦略が安全性と根治性の担保の為にも望ましいと考える.