講演情報

[R5-1]閉塞性大腸癌に対する周術期アプローチの変遷と治療成績改善に関する検討

日吉 雅也, 鈴木 真美, 深井 隆弘, 長谷川 由衣, 寺井 恵美, 木谷 嘉孝, 浦辺 雅之, 森園 剛樹, 渡辺 俊之, 橋口 陽二郎 (大森赤十字病院外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】閉塞性大腸癌治療の周術期戦略の最適化と成績向上を目指し、当院における年代別治療成績推移と術前減圧療法・術後療法の実施状況について検討した。【対象と方法】2018年1月-2025年3月に当科で外科手術を施行した閉塞性大腸癌86例を対象とした。検討1:2023年以前(前期:61例)、2024年以後(後期:25例)に分類し比較。検討2:絶食以外の術前減圧療法または緊急手術を要した62例(術前減圧群:32例、緊急手術群:30例)を比較。統計学的有意水準はp<0.05とした。【結果】検討1:後期群で初回手術での癌切除率は52.5%から84.0%に上昇(p=0.007)、低侵襲手術率は6.6%から68.0%に上昇(p<0.001)、人工肛門作成率は59.0%から36.0%に減少(p=0.044)した。手術時間は132.1分から262.3分に延長(p<0.001)したが、出血量は198.0mlから54.5mlに減少(p=0.001)した。術前減圧療法の施行率は前期29.5%(18/61例)、後期56.0%(14/25例)と、後期で有意に上昇した(p=0.028)。術前減圧療法施行群におけるステント治療の実施率は前期27.8%(5/18例)、後期100%(14/14例)と、後期で有意に上昇した(p<0.001)。術後在院日数は、前期22.8日から後期15.4日と短縮した(p=0.031)。検討2:術前減圧群の内訳は、ステント19例、経肛門イレウス管4例、経鼻イレウス管9例であった。術前減圧群で初回癌切除率96.9%(緊急手術群20.0%、p<0.001)、低侵襲手術率50.0%(0.0%、p<0.001)、人工肛門作成率9.4%(100.0%、p<0.001)、Clavien-Dindo分類Grade III以上の合併症率3.1%(20.0%、p=0.049)、二期的切除も含めた最終的大腸癌原発巣切除率96.9%(80.0%、p=0.050)と良好であった。術後在院日数は術前減圧群13.4日、緊急手術群28.2日で、術前減圧群の方が有意に短縮していた(p<0.001)。根治度A/Bの術後補助療法実施率および根治度Cの追加治療実施率において両群間に有意差はなかった。最終的根治度も両群間に有意差はなかった。【考察】年代別後期群での成績向上は低侵襲手術増加、術前減圧による患者状態改善によると考えられる。術前減圧療法の取り組みとステント使用の増加が、治療成績の向上に寄与した可能性がある。