講演情報

[R7-1]高齢者大腸癌手術患者の治療方針と術後成績

植田 吉宣, 齊藤 修治, 宮島 綾子, 佐々木 一憲, 江間 玲, 平山 亮一, 大塚 亮, 白井 孝之 (横浜新緑総合病院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景と目的】高齢者は併存疾患を有しているこが多く、いかに術後合併症を防ぎ、かつ再発を予防し予後に寄与するかということが重要である。当院では、85歳以上の大腸癌手術患者には郭清範囲を縮小するなど侵襲を減らすような治療方針を基本としている。85歳以上の大腸癌手術患者のうちCurAに限定した患者について、術後成績及び郭清範囲を縮小することの妥当性を後方視的に検討する。
【対象】2015年4月から2024年12月までに原発切除を行った症例は735例で、85歳以上は51例(6.9%)だった。そのうちCur Aに限定した44例を対象とした。
【結果】44例の年齢中央値は88歳(85-95歳)、男性19例、女性25例、右側結腸/左側結腸/直腸 22/14/8例だった。38例(86%)で腹腔鏡下手術が施行されており、2018年以降は全例で鏡視下に手術を行っていた。StageはI/II/III 4/26/14例で,リンパ節郭清はD1/D2/D3 14/24/6 例だった。術後在院日数は14日(8-42日)、短期合併症は26例(59%)(せん妄12件、尿路感染症7件、SSI 5件、カテーテル関連血流感染症2件、その他に蜂窩織炎、化膿性肝嚢胞、心不全、痛風、腸炎が各1件)に認め、Clavien-Dindo分類Grade IIIa以上の合併症は化膿性肝嚢胞に対する経皮的ドレナージ術の1例(2%)だった。9例(20%)に再発を認め、肝5件、肺、腹膜が各2件、遠隔リンパ節、局所が各1件だった。2025年4月時点で生存者は19例、残り26例の内18例(69%)が他病死であり、3年DFS 81%、5年DFS 63%だった。
【小括】耐術可能と判断され待機的に原発巣切除が行われた症例では、軽度の短期合併症は多いものの重症合併症は少なく腹腔鏡下手術を含め安全に手術が行われていた。85歳以上の高齢者に対して当院ではリンパ節郭清を手控えることが多いが、現在のところ所属リンパ節再発を認めておらず、Cur A症例の69%を他病死で失っている。
【結語】Cur Aを目指すリンパ節郭清に留める方針は妥当である。