講演情報

[R8-1]当院における高齢者大腸癌手術症例の検討

佐々木 恵, 江澤 瞭, 松永 史穂, 坂野 正佳, 山下 大和, 田澤 美也子, 石井 武, 海藤 章郎, 光法 雄介, 伊東 浩次 (土浦協同病院消化器外科)
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はじめに
人口の高齢化にともない高齢者大腸癌症例数も増加傾向にある.年齢は術後合併率上昇のリスクとする報告が多いが,近年では高齢者に対する大腸癌手術を安全に行える可能性が示されている.今回,我々は当院で経験した80歳以上の高齢者大腸癌手術症例の短期, 長期成績について検討した.
対象と方法
2021年8月から2025年3月までに当院で大腸癌手術を施行した592例を対象とした. 80歳以上の症例122例(20.6%)を高齢者群, 80歳未満の症例470例(79.4%)を非高齢者群と分類し, 両群を後方視的に比較検討した.
結果
年齢中央値は高齢者群83歳, 非高齢者群69歳であり, 両群において男女比, 糖尿病罹患率, 腫瘍占拠部位に有意差を認めなかった.ASA, 腹部手術歴の率は高齢者群で有意に高かった.また, 手術アプローチや術式については有意差を認めなかった.
手術時間中央値は高齢者群231分, 非高齢者群253分であり, 有意に高齢者群で短かった.郭清リンパ節個数,出血量, R0手術率において有意差は認めなかった. Clavien-Dindo IIIa以上の術後合併症は, 高齢者群4例(3.2%),非高齢者群14例(2.9%)に認めたが有意差は認めなかった. また, 術後在院日数中央値は両群で6日であり, 再発例は高齢者群10例(8.1%), 非高齢者群23例(4.8%)で有意差は認めなかった.
結語
今回の検討では,術後合併症率や術後在院日数に両群で有意差はなく, 80歳以上の高齢者であっても大腸癌手術は安全に行うことが可能と考えられた.