講演情報
[R8-3]高齢者pStageⅢ大腸癌患者に対する術後補助化学療法の検討
小金井 雄太1, 田 鍾寛1, 山本 峻也2, 柴葉 裕介3, 田中 宗伸1, 工藤 孝迪3, 大矢 浩貴1, 前橋 学3, 鳥谷 建一郎2, 藤原 淑恵1, 森 康一3, 諏訪 雄亮3, 小澤 真由美3, 諏訪 宏和4, 渡邉 純3,5, 遠藤 格1 (1.横浜市立大学消化器・腫瘍外科学, 2.横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター, 3.横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科, 4.横須賀共済病院外科, 5.関西医科大学下部消化管外科学講座)
【背景】pStageⅢ大腸癌では術後補助化学療法が推奨されているが,高齢者に対する術後補助化学療法の安全性・有効性は明らかではない.
【目的】本研究ではpStageⅢ大腸癌治癒切除症例において術後補助化学療法が高齢患者に及ぼす影響について検討した.
【方法】2012年1月から2021年12月までに当教室の関連施設で治癒切除を施行したpStageⅢ大腸癌患者2196例中のうち,術後化学療法を行った417例を,75歳以上(A群)と75歳未満(B群)に分け,後方視的に比較検討を行った.
【結果】A群67例,B群350例.年齢中央値はそれぞれ78歳[76-80]歳, 63歳[55-69],男女比は41:26 vs. 181:169(p=0.15),BMIは23.0[21.1-25.2] vs. 22.8[20.4-24.7](p=0.66),PS≥3はB群の2人のみで,心疾患7.5% vs. 4.9%(p=0.41)と糖尿病20.9% vs15.1%(p=0.25)では差は認めなかったが,腎機能障害は34.3% vs. 13.7%(p>0.01)とA群で有意に多かった.
腫瘍の局在は右側:左側20:47 vs. 83:267(p=0.29),手術時間は211[162-283]分 vs. 194[164-251]分(p=0.24),術後在院日数は8[6-13]日 vs. 8[6-13]日(p=0.48),術後合併症(Clavien Dindo≥2)は16.4% vs. 14.9%(p=0.75)でいずれも差はなかった.
観察期間中央値はA群51.5か月 vs. B群60.9か月(p=0.02)でA群が有意に短かった. 3年RFSは78.0% vs. 85.1%(p=0.19),3年OSは89.5% vs. 95.1%(p=0.11)といずれも差を認めなかった. CTCAE≥Grade 2の有害事象発生率は9.1% vs. 8.1%(p=0.78)と差はなかったが,化学療法の完遂率は67.2% vs. 80.1%(p=0.01)とA群で有意に低かった.Oxaliplatin(OX)を併用率は60.6% vs. 78.7%(p>0.01)とA群で有意に少なかった.全体でOX使用による完遂率(80.8% vs. 75.0%, p=0.22),有害事象発生率(15.7% vs. 14.0%, p=0.69)に差はなく,OX併用群と非併用群で3年OS(93.8% vs. 95.6%, p=0.49),3年RFS(83.4% vs. 86.8%, p=0.49)に差はなかった.
【結語】
高齢者に対するpStageⅢの大腸癌に対する術後補助化学療法はOXを併用した場合にも安全に施行されていた.しかし,OXの明確な上乗せ効果が得られておらず,適応については慎重に検討していく必要があると考えられた.
【目的】本研究ではpStageⅢ大腸癌治癒切除症例において術後補助化学療法が高齢患者に及ぼす影響について検討した.
【方法】2012年1月から2021年12月までに当教室の関連施設で治癒切除を施行したpStageⅢ大腸癌患者2196例中のうち,術後化学療法を行った417例を,75歳以上(A群)と75歳未満(B群)に分け,後方視的に比較検討を行った.
【結果】A群67例,B群350例.年齢中央値はそれぞれ78歳[76-80]歳, 63歳[55-69],男女比は41:26 vs. 181:169(p=0.15),BMIは23.0[21.1-25.2] vs. 22.8[20.4-24.7](p=0.66),PS≥3はB群の2人のみで,心疾患7.5% vs. 4.9%(p=0.41)と糖尿病20.9% vs15.1%(p=0.25)では差は認めなかったが,腎機能障害は34.3% vs. 13.7%(p>0.01)とA群で有意に多かった.
腫瘍の局在は右側:左側20:47 vs. 83:267(p=0.29),手術時間は211[162-283]分 vs. 194[164-251]分(p=0.24),術後在院日数は8[6-13]日 vs. 8[6-13]日(p=0.48),術後合併症(Clavien Dindo≥2)は16.4% vs. 14.9%(p=0.75)でいずれも差はなかった.
観察期間中央値はA群51.5か月 vs. B群60.9か月(p=0.02)でA群が有意に短かった. 3年RFSは78.0% vs. 85.1%(p=0.19),3年OSは89.5% vs. 95.1%(p=0.11)といずれも差を認めなかった. CTCAE≥Grade 2の有害事象発生率は9.1% vs. 8.1%(p=0.78)と差はなかったが,化学療法の完遂率は67.2% vs. 80.1%(p=0.01)とA群で有意に低かった.Oxaliplatin(OX)を併用率は60.6% vs. 78.7%(p>0.01)とA群で有意に少なかった.全体でOX使用による完遂率(80.8% vs. 75.0%, p=0.22),有害事象発生率(15.7% vs. 14.0%, p=0.69)に差はなく,OX併用群と非併用群で3年OS(93.8% vs. 95.6%, p=0.49),3年RFS(83.4% vs. 86.8%, p=0.49)に差はなかった.
【結語】
高齢者に対するpStageⅢの大腸癌に対する術後補助化学療法はOXを併用した場合にも安全に施行されていた.しかし,OXの明確な上乗せ効果が得られておらず,適応については慎重に検討していく必要があると考えられた.