講演情報

[R8-5]高齢者に対する他臓器合併切除を要するcT4b結腸癌に対する腹腔鏡下手術の短期・長期成績についての検討

武田 泰裕, 小菅 誠, 後藤 圭佑, 月原 秀, 鎌田 哲平, 阿部 正, 高野 靖大, 大熊 誠尚, 衛藤 謙 (東京慈恵会医科大学外科学講座消化管外科)
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【緒言】日本は世界有数の高齢社会であり,大腸癌患者においても高齢者の割合が増加している. 高齢者は心肺機能の低下に加え,複数の全身併存疾患を有することが多く,外科治療には根治性だけでなく安全性も強く求められる. 他臓器合併切除を要するcT4b大腸癌に対する手術は侵襲が大きく,従来は開腹手術が主流であったが,近年では鏡視下手術の適応も広がりつつある. しかしながら高齢者におけるその安全性と有効性は十分に検討されていない.
【目的】高齢者における局所進行結腸癌(cT4b)に対する,他臓器浸潤合併切除を要する腹腔鏡下手術の短期・長期成績を明らかにし,その有用性を評価することを目的とした.
【対象・方法】2008年1月~2020年12月に当院でcT4b結腸癌(Stage IVを除く)に対して他臓器浸潤合併切除にて根治切除を施行した65歳以上の34例を腹腔鏡群(LG)と開腹群(OG)とし,後ろ向きに検討した. 術後合併症,無再発生存率(DFS)および全生存率(OS)について検討した.
【結果】LGは14例,OGは20例で,全体の平均年齢は73歳で男性が23例(68%)を占め,両群間の患者背景にはBMI(19.7 kg/m2 vs 22.8 kg/m2, P = 0.044)以外には有意な差を認めなかった. LGで出血量は少なく(8ml vs 395ml, P < 0.001),術後入院期間も短かい結果となった(10日 vs 21日, P < 0.001). 病理学的Stage(II/III: 9/5 vs 9/11, P = 0.315)および剥離断端陽性率(0例(0%) vs 3例(15%), P = 0.129)は両群間に有意な差は認めず,術後合併症に関しては,全合併症およびGrade3以上の重大合併症はOGで多い傾向があるものの両群に有意差を認めなかった( All grade:2例(14%) vs 8例(40%), P = 0.105, Grade ≧3a:0例(0%) vs 3例(15%), P = 0.129). 平均観察期間は64.2ヶ月で,DFSとOSは両群間で有意な差を認めなかった( 5-year DFS: 61.5% vs 63.6%, P = 0.914, 5-year OS: 92.3% vs 85.9%, P = 0.440).
【結論】今回の検討ではLGで出血量が少なく,術後入院期間が短い結果であった.また術後合併症および長期成績も許容される結果であり,他臓器合併切除を要する結腸癌に対する腹腔鏡下手術は高齢者においても有用な治療選択肢の一つであると考えられた.