講演情報

[R9-3]高齢者大腸癌手術症例において”change frail”が予後に与える影響

岩本 博光, 松田 健司, 田村 耕一, 三谷 泰之, 中村 有貴, 堀 雄哉, 下村 和輝, 上田 勝也, 阪中 俊博, 田宮 雅人, 兵 貴彦, 川井 学 (和歌山県立医科大学第2外科)
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《緒言》当科では高齢者に対する大腸癌手術の安全性、有効性について、厚生労働省作成基本チェックリスト(KCL)を用いたフレイル評価の視点から検討を行い(World J Surg. 2021、Surg Open Sci. 2022)、術前にフレイルでなかった患者が術後にフレイルに変化する”change frail”の独立因子は合併症の有無、ストーマ造設の有無であることを報告した。そこで今回はchange frailと長期予後の関係について検討し報告する。《対象と方法》2017年3月から2018年12月に当科で大腸癌に対し手術を施行した、65歳以上の217例を対象とし、KCL、各因子から、予後について検討した。《結果》男性/女性は127/90であり、年齢の中央値は75±6.8歳、BMIの中央値は22±3.3であり、病期は0+I/II/III/IVがそれぞれ48例/71例/69例/29例であった。手術時間の中央値は198±95.6 min、出血量の中央値は20±87.7 mlであった。217例の内、術後前にKCLでフレイルの診断がついた症例が211例であり、術前non frail群は127例、frail群は86例であった。non frail群の内、術後もnon frailであったstay non frail群は104例、術後にfrailとなったchange frail群が23例(18.1%)であった。生存曲線を用いて術前のfrail群とnon frail群の予後について比較検討したところ、RFS、OSともに有意差は認めなかった(RFS p=0.53、OS p=0.19)。一方、stay frail群とchange frail群の予後について比較検討したところ、RFS、OSともに有意にchange frail群で予後が悪かった(RFS p=0.01、OS p=0.0002)。さらに術前non frail群で検討したところ、RFSでは単変量解析ではchange frail、StageIIIであること、術中出血が20ml以上であることが、多変量解析ではStageIIIであることが予後悪化因子であった。OSでは単変量、単変量解析共にchange frail、StageIII以上であること、術前Aib値が3.5g/dl以下であることが予後悪化因子であった。《結語》高齢者の大腸癌手術においては、周術期のさまざまな要因により、change failに陥りやすいことは容易に想像できる。リハビリテーションや栄養療法などの協力を得て集学的治療を行い、これを予防することにより予後の改善につながる可能性がある。