講演情報
[R9-4]85歳以上大腸癌患者における低骨格筋量と術後成績の検討
阿部 真也1,2, 野澤 宏彰1, 佐々木 和人1, 室野 浩司1, 江本 成伸1, 横山 雄一郎1, 永井 雄三1, 原田 有三1, 品川 貴秀1, 舘川 裕一1, 岡田 聡1, 白鳥 広志1, 石原 聡一郎1 (1.東京大学腫瘍外科, 2.同愛記念病院)
【背景】本邦の高齢化に伴い,高齢大腸癌患者を診療する機会が増えている.高齢者では多様な併存疾患,サルコペニア・フレイルや低栄養状態などの患者因子が術後成績へ影響することが懸念される.そこで,骨格筋量が高齢者大腸癌手術後成績に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】2007年から2022年の間に当科にて根治切除を施行した85歳以上の大腸癌112例を対象とし,低骨格筋量と術後成績を検討した.骨格筋量はCT画像から得られるL3レベルの腸腰筋面積を身長で補正したPMI(Psoas muscle mass index)で評価し,日本肝臓学会基準(男性6.36,女性3.92)未満を低骨格筋量と定義した.栄養状態は術前の血清アルブミン値と体重から算出されるGNRI(Geriatric nutritional risk index)で評価し,98未満を低栄養とした.
【結果】男性51例,年齢中央値86.5歳,低骨格筋量は55例(50.5%),低栄養は62例(54.5%)に認めた.右側結腸/左側結腸/直腸は52/27/33例,病期1/2/3/4は26/51/29/6例,開腹/腹腔鏡/ロボットは41/67/4例だった.CD分類GradeIII以上の重症合併症は8例(7.1%)で,1例の手術関連死(間質性肺炎)を認めた.重症合併症に関して,病期,腫瘍部位,骨格筋量,栄養状態や出血量などを含めて有意差を認める危険因子は抽出されなかった.観察期間中央値は4.1年,5年全生存率/5年癌特異的生存率は68.9/80.4%で,原病死18例,他病死16例であった.全生存に関して,低骨格筋量(HR 2.5,p = 0.02)は病期3/4(HR 2.1,p = 0.03)とともに独立した予後不良因子であったが,併存疾患や栄養状態は予後に関与しなかった.5年癌特異的生存率は低骨格筋量の有無(77.1% vs. 85.0%)で差を認めなかった.他病死に関する5年生存率は,低骨格筋量群で有意に低く(75.6% vs. 92.2%,p<0.01),独立した予後不良因子であった(HR 7.4,p < 0.01).
【結語】根治切除が施行された85歳以上大腸癌患者において,低骨格筋量患者では術後他病死が多いが,術後合併症及び癌特異的生存と関連を認めなかった.
【方法】2007年から2022年の間に当科にて根治切除を施行した85歳以上の大腸癌112例を対象とし,低骨格筋量と術後成績を検討した.骨格筋量はCT画像から得られるL3レベルの腸腰筋面積を身長で補正したPMI(Psoas muscle mass index)で評価し,日本肝臓学会基準(男性6.36,女性3.92)未満を低骨格筋量と定義した.栄養状態は術前の血清アルブミン値と体重から算出されるGNRI(Geriatric nutritional risk index)で評価し,98未満を低栄養とした.
【結果】男性51例,年齢中央値86.5歳,低骨格筋量は55例(50.5%),低栄養は62例(54.5%)に認めた.右側結腸/左側結腸/直腸は52/27/33例,病期1/2/3/4は26/51/29/6例,開腹/腹腔鏡/ロボットは41/67/4例だった.CD分類GradeIII以上の重症合併症は8例(7.1%)で,1例の手術関連死(間質性肺炎)を認めた.重症合併症に関して,病期,腫瘍部位,骨格筋量,栄養状態や出血量などを含めて有意差を認める危険因子は抽出されなかった.観察期間中央値は4.1年,5年全生存率/5年癌特異的生存率は68.9/80.4%で,原病死18例,他病死16例であった.全生存に関して,低骨格筋量(HR 2.5,p = 0.02)は病期3/4(HR 2.1,p = 0.03)とともに独立した予後不良因子であったが,併存疾患や栄養状態は予後に関与しなかった.5年癌特異的生存率は低骨格筋量の有無(77.1% vs. 85.0%)で差を認めなかった.他病死に関する5年生存率は,低骨格筋量群で有意に低く(75.6% vs. 92.2%,p<0.01),独立した予後不良因子であった(HR 7.4,p < 0.01).
【結語】根治切除が施行された85歳以上大腸癌患者において,低骨格筋量患者では術後他病死が多いが,術後合併症及び癌特異的生存と関連を認めなかった.