講演情報

[R9-7]大腸癌におけるクリニカルパスを用いた周術期管理の安全性と入院医療費の検討

塚本 史雄, 林 祐美子, 中田 豊, 岩田 乃理子, 遠藤 晴久, 荻谷 一男, 中島 康晃, 高橋 定男 (江戸川病院外科)
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【背景】大腸癌手術における在院日数短縮は医療プロセス効率化のために重要である。術前処置や術後管理における施設間の差は依然として大きく、大腸癌手術における周術期管理の標準化が必要とされている。当院では大腸癌手術において術後7日までの退院を目指すクリニカルパス(CP)を運用している。当院におけるCPの安全性と入院医療費に関する検討を目的とした。
【方法】2021年4月から2025年3月に当院でCPを適応して大腸癌手術を行った243例を対象とした。術後7日以内の退院をCP達成と定義してCPの達成率と再入院率を用いてCPの安全性を評価した。DPCに基づいた入院医療費を算出して年齢や術後合併症・再入院が入院医療費に与える影響の検討を行った。また、当院で運用しているCPを概説する。
【結果】平均年齢は73歳。結腸癌167例、直腸癌76例。臨床病期はcStage I-II 102例、cStage III-IV 141例。手術アプローチは腹腔鏡手術86例、ロボット手術157例。術後合併症はall gradeで22例(9.1%)、Grade III以上で5例(2.1%)であり、平均術後在院日数は7.4日であった。CPの達成は210例(86.4%)であった。退院後30日以内の再入院は8例(3.3%)であり、うち6例はCP逸脱後の症例であった。全症例を対象とした平均入院医療費は結腸癌で1,348,360円、直腸癌で1,536,410円であった。年齢(75歳未満/75歳以上)で分けると結腸癌では1,314,940円 / 1,373,090円(p=0.10)、直腸癌では1,562,350円 / 1,496,630円(p=0.22)であった。術後合併症(無/有)で分けると結腸癌では1310620円 / 1760910円(p<0.01)、直腸癌では1,475,620円 / 2,053,060円(p<0.01)であった。再入院(無/有)で分けると結腸癌では1,326,280円 / 2,063,850円(p<001)、直腸癌では1,496,630円 / 2,504,400円(p<0.01)であった。
【結論】当院における大腸癌症例を対象としたCPは安全に運用されていた。術後合併症や再入院の少ない安全な手術に加えて周術期管理の普及が国民医療費の低減に寄与する可能性が示唆された。