講演情報

[SY1-3]術前化学放射線療法を施行した下部進行直腸癌の治療成績と再発リスクに応じた最適治療戦略の模索

江本 成伸, 野澤 宏彰, 佐々木 和人, 室野 浩司, 横山 雄一郎, 永井 雄三, 原田 有三, 品川 貴秀, 舘川 裕一, 岡田 聡, 白鳥 広志, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
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【背景・目的】直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)は、本邦でも広く導入されつつあるが、その効果やCRT後の治療経過は多様である。CRT後の治療経過を検討し、最適な治療戦略の確立を目的とした。
【方法】2003年9月〜2025年2月に当院でCRTを施行した直腸癌症例を対象に、臨床病理学的因子および予後を後方視的に検討した。CRTの適応は、原則としてRbにかかるcT3以深またはcN+かつcM0症例とし、照射野に含まれるリンパ節(鼠径、傍大動脈)に転移が疑われる場合に限りcM1を対象とした。
【結果】症例は441例で、年齢中央値は64歳(32-88歳)、レジメンはRTのみ/フッ化ピリミジン/オキサリプラチン併用/イリノテカン併用が3/316/6/116例であった。cStageは1/2/3/4が5/203/216/15例で、CRT後の治療経過は、(A) 根治手術(Cur A/B)を施行できた419例(うち縮小手術3例、ycStage 4が21例)、(B) 遠隔転移の出現により根治切除不能となった6例、(C)PS低下による手術不能が2例(76歳、78歳)、 (D)患者希望による非手術経過観察14例(cCR/near CRは6/4例)の4群に分類された。A群におけるpCR率は12.3%で、5年OS, RFSはそれぞれ84%, 73%であった。Cox比例ハザードモデルによる再発の独立したリスク因子は、pT4, pN+, pM1であった。B, C群は、あわせて全体の1.8%にとどまったが、C群はいずれも高齢者であった。D群では、9例(64%)で局所再増大を認め、7例でサルベージ手術を施行した。Local regrowth-free survivalの中央値は16.5ヶ月、5年OS, RFSはそれぞれ88%, 64%であった。
【結論】T4およびリンパ節転移陽性例は再発リスクが高く、TNTの適応を検討すべきと考えられた。また、高齢者への前治療は慎重な判断が求められる。当科では現在、cT4, cN2-3症例を対象にTNTの臨床試験を開始している。