講演情報

[SY1-8]当科における術前CRT、TNTおよびNOMの治療成績

向井 俊貴, 野口 竜剛, 坂本 貴志, 松井 信平, 山口 智弘, 秋吉 高志 (がん研究会有明病院大腸外科)
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【背景】
当科では2005年より腫瘍下縁がRbにかかる進行下部直腸癌に対し術前(C)RT+TMEを標準治療として行ってきた。2012年からは再発高リスク症例に対してTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)を、さらに2017年には前治療で臨床的完全奏功が得られた症例に対するNon Operative Management (NOM)を導入した。一方で、TNTの安全性、NOMの評価、Regrowthに対するSalvage手術に関する検討は少ない。当科における進行下部直腸癌に対する治療戦略、短期・長期成績について報告する。
【方法】
2004年7月から2022年12月に術前治療後に手術もしくはNOMを選択した腫瘍肛門縁距離50mm以下のcStageII/III進行下部直腸癌662+61=723例を後方視的に検討した。
【結果】
患者背景は、男性68%、年齢中央値60歳、腫瘍肛門縁距離35mmで、cStage II/III=267/456、(C)RT/TNT=448/275で、前治療後にTMEを662例に施行し、NOMは61例であった。
TMEを施行した662例に対しては、側方リンパ節郭清を243例(36.7%)に施行し、他臓器合併切除は109例(16.5%)であった。手術時間と出血量の中央値は341分と60gであった。CDGrade3以上の術後合併症率は9.3%で術後死亡は認めず、剥離断端陽性は7例(1.1%)に認めた。pStageはCR/0/1/2/3=101/10/186/165/199で、CRT群のCR率は11.6%、TNT群は17.8%で、CRT群のpStageIIIに対する補助化学療法導入率は45%であった。観察期間内に再発を164例認め、局所再発は28例、遠隔転移は136例であった。5年無再発生存率は74%、局所無再発生存率は94.6%で、CRT群とTNT群で術後短期および長期成績に差を認めなかった。
NOMは2017年から2022年にCRTを施行した133例中16例(12%)、またTNTを施行した200例中45例(23%)に対して導入した。局所再増大は10例認め、全例Salvage手術が可能であった。2年局所無増大生存率は81.8%、2年遠隔無再発生存率は92.9%であった。
【結語】
TNT群は主に再発ハイリスク症例に対して施行したが、CRT群よりもpCR率、NOM導入率が高く、術後合併症率および長期成績は両群に差を認めなかった。またNOM中のRegrowthに対しては高いSalvage率であった。進行下部直腸癌に対するTNTは安全に施行することが可能であった。