講演情報

[SY2-5]潰瘍性大腸炎入院例に対する新規JAK阻害薬Upadacitinibの短期治療成績

小森 友花子, 横山 薫, 金澤 潤 (北里大学医学部消化器内科学)
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【目的】潰瘍性大腸炎(UC)の入院加療例は治療選択肢の増加と共に減少しているが, 入院を要する重症例も存在する.2022年よりJanus kinase(JAK)阻害薬は3剤使用可能となり, Upadacitinib(UPA)の入院例に対する短期治療成績について検討を行った.
【方法】単施設, 後方視的検討とした.当院でJAK3剤が使用可能となった2022年12月以降に入院例に導入したJAKはUPAのみで, 12例を対象とした.UPA導入時Seo’s index(SI; 重症≥220)の平均は220.2±28.8であった.病変範囲は全大腸炎型 92%(11/12例), UPA導入前4週以内に大腸内視鏡検査は92%(11/12例)に施行され, MES 3 91%(10/11例)であった.開始量は全例45mg/日だった.主な直前の治療薬はtacrolimus(Tac) 4例, 生物学的製剤(Bio)4例, 他のJAK2例だった.
【検討項目】主要評価項目は外科手術率, 副次評価項目はUPA導入3日, 1週, 2週, 4週時の臨床的改善率, 直前の治療薬(Tac, Bio, JAK)別の改善率とした.なお寛解はSI≤120, 改善はSI<150またはUPA導入時より≥70の低下と定義した.
【成績】1)外科手術率は16.7%(2/12例)で, UPA導入から手術まで15日と31日であった.2)臨床的改善率はUPA導入3日 16.7%(2/12例), 1週 25%(3/12例), 2週 33.3%(4/12例), 4週54.5%(6/11例)であった.なお, 臨床的寛解は2週時1例, 4週時2例認められた.3)直前治療別の導入1週時の臨床的改善率はTac 50%(2/4例), Bio 25%(1/4例), JAK 0%(0/2例)であった.
【結論】UPAはTacやBio不応の入院重症例に対しても限定的ながら治療効果が得られたが, 内科治療に固執せず外科手術のタイミングを逸しないことが肝要である.