講演情報
[SY2-6]潰瘍性大腸炎の治療におけるJAK阻害薬内スイッチの有効性と安全性
櫻井 俊之, 秋田 義博, 菊地 伊都香, 古守 萌, 川村 愛子, 豊永 貴彦, 加藤 智弘, 猿田 雅之 (東京慈恵会医科大学内科学講座消化器・肝臓内科)
【背景】潰瘍性大腸炎(UC)に対するJAK阻害薬3剤(filgotinib, FIL; tofacitinib, TOF; upadacitinib, UPA)の有効性が示されているが、クラス内スイッチ使用例についての報告は少ない。【目的】JAK阻害薬内のスイッチにおける有効性や安全性について明らかにする。【方法】単施設後方視的研究を行った。当院通院中のUC患者で、2019年1月〜2025年3月までにJAK阻害薬から別のJAK阻害薬へスイッチした症例を対象とし、患者背景(性別・年齢)、疾患情報(病型、罹病期間、使用薬剤歴、併用薬剤)、臨床情報(症状スコア[Simple Clinical Colitis Activity Index; SCCAI]、血液検査値、内視鏡所見)を調査し、スイッチした薬剤とその理由、スイッチ後の効果と安全性、継続率について解析した。スイッチ間にJAK阻害薬以外の分子標的薬を使用した症例は除外した。【結果】30例に計35回のクラス内スイッチが行われた。男性13例(37.1%)、平均年齢47.9±14.9歳、全大腸炎型27例(77.1%)、左側大腸炎型8例(22.9%)、平均罹病期間103±88ヶ月であった。スイッチ時のMayo内視鏡サブスコア2.3±0.9、SCCAI 4.4±3.2であった。スイッチ理由は、治療強化29例、有害事象4例、その他2例であった。JAK阻害薬2剤目へのスイッチ30例、3剤目へのスイッチ5例で、FIL→TOF 6例(すべて治療強化)、TOF→UPA4例(すべて治療強化)、FIL→UPA 16例(すべて治療強化)、UPA→TOF 1例(有害事象)、UPA→FIL 2例(有害事象)、TOF→FIL 6例(うち治療強化3例)であった。治療強化目的に変更した症例の8週間後の臨床的寛解率はTOF 80.0%、FIL 66.7%、UPA 76.5%(p=0.29)であった。有害事象を17例(48.6%)に認め、UPA使用例で70.0%と有意に高率であった(p=0.01)。継続率は12週目まで74.3%、24週目までで68.6%でUPAへのスイッチ例でやや高い傾向が示された。【結論】JAK阻害薬内スイッチの有効性が示された。有害事象の頻度を考慮してUPAを2剤目以降の選択肢にすることが望ましい。