講演情報
[SY3-3]当院の肛門診療の歩みと痔核手術の変遷
加藤 典博, 加藤 久仁之 (ふるだて加藤肛門外科クリニック)
当院は岩手県で67年間親子三代で継承してきた個人の有床診療所で、初代が1959年に盛岡市に肛門科外科医院を開設、その後二代目(演者)が2000年に紫波郡にふるだて加藤肛門外科クリニックを移転、2025年に三代目が継承した。初代は親戚筋であった大阪市の開業医で研修したが、演者の時代岩手県は、医局から肛門病専門施設への内地留学は許されず、出張病院では1970年代であってもWhitehead手術や独自の術式が行われ、肛門病学は不毛の地であった。そのため学会、研究会、業者主催のセミナーに参加し独学で知識を得るしかなかった。三代目の時代は動画の画質向上やWEB開催・オンデマンドが増え情報は得られ易いが、監視・点検体制のない個人開業医ではエビデンスのない独自の手術法がまかり通り易い。したがって自験例の検証を怠らず、学会などで他の肛門科医の指導や意見を謙虚に聞きながら議論をする場が必要である。
当院の痔核手術は貫通結紮法主体(初代)、結紮切除術主体(演者)、ALTA療法主体(演者・三代目)と変化してきた。そのALTA療法は第1期(2005~2008年)LE+A(1個の痔核にLE、他の痔核にALTA)、第2期(2009~2013年)E・A(内痔核ALTA+外痔核切除)、第3期(2014~2024年)ALTA単独(Aを第一選択、A・Eはオプション)と変遷してきた。今回、ALTA療法の変遷による影響と今後の問題点について検証した。【対象】過去25年間のALTA療法9715症例、31255病変。【方法】合併症発生率、術後ロキソプロフェン投与量、累積無再発率(K-M法)を各期間毎に検討。【結果】LE主体、E・A主体、A主体と切除度が減少するほど晩期出血病変とロキソプロフェン投与量は減少したが再発病変は増加傾向を示した。ALTA療法に特有な潰瘍・膿瘍形成病変は一時的に増加したが、投与技術の向上で減少した。120ヶ月の術式別無再発率はLE:85.6%、E3:96.9%、A64.0%、E2:56.4%、の順に低下し、LEとE3間、AとE2間には有意差は認められなかった。【考察】当院のALTA療法の変遷は個人開業医としては順当なものと判断され、今後はオプションとしての外痔核切除の客観的・肉眼的適応基準(粘膜提靭帯状態等を加えた)の必要性を感じる。
当院の痔核手術は貫通結紮法主体(初代)、結紮切除術主体(演者)、ALTA療法主体(演者・三代目)と変化してきた。そのALTA療法は第1期(2005~2008年)LE+A(1個の痔核にLE、他の痔核にALTA)、第2期(2009~2013年)E・A(内痔核ALTA+外痔核切除)、第3期(2014~2024年)ALTA単独(Aを第一選択、A・Eはオプション)と変遷してきた。今回、ALTA療法の変遷による影響と今後の問題点について検証した。【対象】過去25年間のALTA療法9715症例、31255病変。【方法】合併症発生率、術後ロキソプロフェン投与量、累積無再発率(K-M法)を各期間毎に検討。【結果】LE主体、E・A主体、A主体と切除度が減少するほど晩期出血病変とロキソプロフェン投与量は減少したが再発病変は増加傾向を示した。ALTA療法に特有な潰瘍・膿瘍形成病変は一時的に増加したが、投与技術の向上で減少した。120ヶ月の術式別無再発率はLE:85.6%、E3:96.9%、A64.0%、E2:56.4%、の順に低下し、LEとE3間、AとE2間には有意差は認められなかった。【考察】当院のALTA療法の変遷は個人開業医としては順当なものと判断され、今後はオプションとしての外痔核切除の客観的・肉眼的適応基準(粘膜提靭帯状態等を加えた)の必要性を感じる。