講演情報

[SY3-6]肛門科医師として, 研究マインドをもち臨床に生きる.

大橋 勝久1, 大橋 勝英1, 佐々木 章公2, 太田 和美2, 北川 一智2 (1.大橋胃腸肛門科外科医院, 2.十全総合病院)
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医療の専門分化が進む中で, 肛門疾患に特化した肛門科医師の役割は, 患者のQOLに直結する重要な領域である. また, 3大痔疾患や直腸脱といった代表的な肛門疾患から, 排便障害などの機能性疾患, IBDなどの内科疾患, 大腸がんや肛門部がんなどの悪性疾患まで多岐にわたる診断能力を求められる.
 一方で, 肛門科領域における臨床研究の蓄積は, 他の領域と比較すると限定的であり, 科学的根拠に基づく治療戦略や診療ガイドラインの整備の更なる発展が望まれる. 本邦の肛門科診療の特性上, RCTや他施設共同試験の実施は困難だからこそ, 現場の日常診療で生じた疑問を研究へ昇華する「研究マインド」を日頃から意識することが重要である.
1. 明確なクリニカルクエスチョン(QQ)をもつこと.
2. QQを証明するためのデータベースを作成し, 日々の日常診療で前向き登録しておく.
3. 学会発表等の抄録作成時点で臨床データを抽出し, 論文化できるまでの統計解析をおこなっておく.
4. 英語論文検索のクセをつける.
5. 症例報告を大切にする.
6. 地域連携を大切にし, 地域で不足する疾患領域を補完する.
 これらに留意し, 平成21年から当地で外科・肛門科医師として重ねてきた実績は, 学会・研究会175発表, 講演91回, 論文32編(和文10編 英文22編 総インパクトファクター56.3). 2020年度版の肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン作成にも携わらせていただいた. 研修医時代に「エビデンスは自分でつくるものだよ.」と恩師に言われた言葉を, 今でも心に秘めて日々の日常診療に取り組んでおり, 日常での取り組み工夫を報告する.