講演情報

[VPD1-1]結腸癌手術における体腔内吻合の工夫と短期・長期成績

板谷 喜朗, 肥田 侯矢, 岡村 亮輔, 星野 伸晃, 小濵 和貴 (京都大学消化管外科)
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[背景]結腸癌手術におけるロボット支援手術の保険収載も相まって、体腔内吻合(inctracorporeal anastomosis, ICA)による完全腹腔鏡下手術が広まっている。ICAは腸管授動範囲を必要最低限にでき、術後腸管蠕動回復が早いとされる一方、前処置を含む周術期管理のピットフォールや、高難易度の手技、癌としての予後など課題も多い。当科では縫合結紮せず共通孔をステイプラーで閉鎖する”四発法”で良好な短期成績を報告してきた。本発表では長期成績を含めて報告する。
[手技の工夫]術野汚染を避けるため全例で機械的+化学的前処置を行っている。術前腸閉塞を認める症例には、ステントによる閉塞解除後に手術を行うことを原則としている。機械的前処置では浸透圧性下剤は使用せず、刺激性下剤のみを用いて、液状便が吻合時に漏出しない様注意している。共通孔は鉗子で速やかに閉鎖し、縫合は行わずステイプラーで共通孔を閉鎖し、切り飛ばした組織はプラスティックバックで回収し術野汚染を防ぐ工夫をしている。吻合方法はステイプラーの挿入軸を基準にして、端側(overlap)/端々(delta)吻合を使い分けている。
[方法]2017年1月から2023年12月の間、519例の結腸癌手術を行った。DST吻合、Hartmann手術、他癌合併手術、緊急手術を除く323例(ICA112例、体外吻合[extracorporeal anastomosis, ECA]211例)の短期成績、長期成績を解析した。
[結果]ICAとECAで年齢、性別、術式(右/左)には差が無かったが、ICAでは進行度の低い症例が多く、ロボット支援手術の割合も高かった。ICAでは手術時間が短く(208分対234分)、Clavien-Dindo 2以上の合併症は少なかった(12%対22%)。観察期間中央値42ヶ月時点では、ステージごとののrelapse-free survivalをKaplan-Meier法によるlog rankテストでは、ステージ2,3はそれぞれ0.58,0.63と有意差を認めなかった。
[結語]当科で行っている四発法によるICAは、最低限の剥離範囲とステープリングによる速やかな吻合手技により手術時間の短縮に寄与する。また術前の機械的+化学的全処置により術後合併症の軽減に寄与する。さらに癌の長期予後はECAと遜色ない。