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[VPD1-6]結腸癌に対する体腔内Delta吻合と体腔外FEEA吻合の短期・中期成績の比較:傾向スコア・マッチング解析

岡田 倫明1, 上畑 恭平2, 稲本 将1, 野村 明成1 (1.大阪赤十字病院, 2.京都大学消化管外科)
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【はじめに】体腔内吻合は近年普及が進み、体腔外吻合と比して腸管切除マージンの確保が容易で、腸蠕動の早期改善や創長の短縮といった利点が報告されている。しかし、中長期成績に関する報告はまだ少ない。今回、当院で行った体腔内デルタ吻合(ID)と体腔外機能的端々吻合(EF)の短期・中期成績を比較検討したので報告する。
【方法】2020年1月から2023年9月に結腸癌手術を受けた患者から、傾向スコアマッチングによりID群とEF群をそれぞれ100例抽出し、短期・中期成績を後ろ向きに比較した。
【結果】手術時間はID群で有意に長かった(289 vs. 234 min, p<0.01)が、出血量はID群で有意に少なかった (0 vs. 0g, p=0.03)。腸管切除マージンはID群で肛門側が有意に長く(120 vs. 100 mm, p < 0.01)、口側は同等であった(120 vs. 110 mm, p = 0.12)。周術期合併症(Clavien–Dindo ≥2)は2群間で差はなかった(8 vs. 9%, p=1.00)。回盲部切除術において、ID群で肝湾曲部の授動率が少なく(52% vs. 97%, p < 0.01)、副右結腸静脈の切離率も少なかった(11% vs. 44%, p < 0.01)。左側結腸癌手術では、ID群では脾湾曲とSD junctionの双方の授動を要する症例が少なかった(24 vs 75%, p<0.01)。播種再発はID群で3例、EF群4例で認め、うち6例がT4症例であった。3年 RFS(80 vs. 84%, p=0.97)と3年OS(81 vs. 91%, p=0.10)は両群に有意差はなかった。
【結果】体腔内デルタ吻合は体腔外機能的端々吻合と比較して短期・中期成績に遜色なく、腸管の授動範囲や出血量を低減に寄与し得る有用な術式である。