講演情報

[VPD1-8]結腸癌に対する体腔内吻合の短期・長期成績

富澤 元, 塚本 俊輔, 田藏 昂平, 加藤 岳晴, 永田 洋士, 高見澤 康之, 森谷 弘乃介, 金光 幸秀 (国立がん研究センター中央病院大腸外科)
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【背景】結腸癌手術における体腔内吻合は、短期成績に関する報告が散見されるが、長期成績に関するエビデンスは確立されていない。
【目的】長期予後が追跡できた結腸癌患者において、体腔内吻合の短期・長期成績を検討し、安全性と有用性を明らかにする。
【対象と方法】2020年3月から2023年2月までに当院で原発性結腸癌に対して腹腔鏡またはロボット支援下結腸切除術を施行した症例を対象とした。Propensity score matching(PSM)を用いて背景因子を調整し、短期・長期成績を比較検討した。
【結果】体腔外吻合群(EA群)177例と体腔内吻合群(IA群)52例を対象にPSMを行い、各群48例(観察期間中央値:EA群36ヶ月,IA群25ヶ月)が選択された。両群間の背景因子に有意差を認めなかった。手術のアプローチ法は、EA群においてロボット支援下手術の割合が低かった(3例[6.2%]vs22例[45.8%],p<0.001)。小開腹創において、Pfannenstiel切開はIA群のみに認めた(0%[0例]vs16.7%[8例],p=0.006)。吻合方法はEA群では全例で機能的端々吻合が施行され、IA群では全例でデルタ吻合が施行された。短期成績については、出血量(15ml vs 4ml,p<0.001)、手術時間(184分vs177分,p=0.369)、Clavien-Dindo分類II以上の合併症(3例[6.2%]vs3例[6.2%],p=1)、吻合部出血(0例[0%]vs1例[2.1%],p=1)、縫合不全(0例[0%]vs0例[0%],p=1)であり、出血量においてIA群が良好な成績を示した。長期成績については、3年無再発生存率(89.1%vs87.0%,p=0.62)と3年累積腹膜播種再発割合(4.2%vs6.4%,p=0.64)に統計学的な有意差を認めなかった。腹壁瘢痕ヘルニアの発生率は、EA群が4例(8.3%)、IA群が 6例(12.5%)であり(p=0.74)、多変量解析では、BMIが有意なヘルニア発症リスク因子であった(OR 1.34, 95% CI 1.08–1.80, p = 0.006)。Pfannenstiel切開例でのヘルニア発症を認めなかった。
【結論】体腔内吻合は体腔外吻合と比較して、出血量が少なかった。高BMI症例では体腔内吻合とPfannenstiel切開を組み合わせることで、腹壁瘢痕ヘルニアを予防できる可能性がある。長期成績で差を認めなかったが、体腔内吻合群の症例数が限られており、更なる症例の蓄積が必要がある。