講演情報

[VPD2-6]後方深部痔瘻に対する括約筋温存術後再発症例の検討

小野 朋二郎, 内海 昌子, 渡部 晃大, 三宅 祐一朗, 久能 英法, 竹中 雄也, 相馬 大人, 安田 潤, 齊藤 徹, 根津 理一郎, 弓場 健義 (大阪中央病院外科)
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緒言:痔瘻を根治するためには原発口から原発巣までの一連の構造を処理することが不可欠である.我々は括約筋温存術式として括約筋の外側に術野を確保して側方から最短の距離でapproachすることで,括約筋の切除をminimizeする工夫をしている.すなわち原発巣は外側から開放してドレナージし,1次瘻管を肛門管側から切除して瘻管切除部の括約筋を縫合閉鎖している.本術式においては1次瘻管を切除した部位の括約筋を縫合閉鎖するが,術後経過中に同部が離開して再開通するリスクがあり,術後経過中の再発として再手術を施行している.
症例:2021年1月から2024年12月までに痔瘻根治術を施行した後方深部痔瘻症例は261例であった.このうち196例に括約筋温存術式での痔瘻根治術を施行した.196例の内訳は男性172例,女性24例で年齢の平均は44.8歳であり,手術時間の平均は34分であった.術後に止血を要する出血を6例に認め,遺残膿瘍のためにドレナージ術を要した症例は10例あった.治癒が得られた153例では治癒までの期間の中央値は3.7(0.8-30.6)ヵ月であった.治癒後の再発症例はないが,上記の通り術後経過中に再手術を施行して再発と診断したものが33例(16.7%)あった.再手術の術式はsetonが31例,Hanley変法が2例であった.再手術後の転帰であるが,治癒した症例は16例で,初回手術から中央値20.1(9.5-33.5)ヵ月で治癒した.setonで再根治術を施行した症例のうち4例ではseton後の治癒不良に対してさらにHanley変法で再再根治術を施行した.再手術を施行した症例を含め,初回手術後2年以上経過している症例は13例あった.
考察:括約筋の温存は痔瘻根治術において根治性とともに重視すべき点であるが,上述のような再手術を要する症例や術後経過が長期化する症例などもあり,これらの症例を回避することも重要である.現在は原発口周囲の括約筋の硬化が強い症例や,原発口が大きく開大している症例,原発巣が内外括約筋間に広く進展している症例などは括約筋温存ではなく,seton法やHanley変法など別の術式を適応するようにして再発症例,治癒遷延症例の回避に努めている.