講演情報
[VSY1-4]高齢者における大腸endoscopic submucosal dissectionの特徴とその治療成績
冨田 侑里1, 吉田 直久2, 小林 玲央2, 井上 健2, 稲田 裕3, 稲垣 恭和4 (1.京都博愛会病院消化器内科, 2.京都府立医科大学消化器内科, 3.京都第一赤十字病院消化器内科, 4.西陣病院消化器内科)
【目的】大腸ESDは長径20mm以上の早期大腸癌を確実に一括切除し得る治療法であり,外科切除に比べて低侵襲である反面,endoscopic membrum resectionに比べて施行時間や入院期間が長く,多様な併存疾患を有する高齢者では慎重な配慮が求められる.当院では施行時間の短縮化および偶発症予防のため,ハサミ型ナイフを用いて牽引クリップとPocket-creation methodを併用し,深部大腸ではgel immersion下での施行および治療後の創部縫縮を原則としている.本研究では高齢者における大腸endoscopic submucosal dissection (ESD)の治療成績や偶発症などを解析した.
【方法】本研究は単施設後方視的検討である.対象は2010年1月から2025年3月に当院で大腸ESDを施行した1911例中で長径20mm未満を除いた1671例とした.抗血栓薬内服などを含む患者背景,治療成績などについて解析を行った.
【結果】全1671例中,80歳以上の高齢者255例と65歳未満の非高齢者509例を抽出し検討した.患者背景は平均年齢 83.3±3.0 vs. 55.5±7.9 (p<0.001),性別(男性比) 52.9% vs. 53.8% (p=0.816),抗血小板薬内服 25.9% vs. 3.3% (p<0.001),抗凝固薬内服 9.8% vs. 1.4% (p<0.001)であった.病変部位(右側, 左側, 直腸)および腫瘍径(mm) 34.3 ± 18.6 vs. 32.5 ± 15.1 (p=0.096)であり, 腫瘍形態(隆起型) 12.9% vs. 20.4% (p=0.010) は有意差を認めた.治療成績はESD施行時間(分) 72.9±50.8 vs. 71.9±52.4 (p=0.393), 一括切除率 96.9% vs. 98.4% (p=0.154),術中穿孔率 2.4% vs. 3.3% (p=0.451),後出血率 1.6% vs. 2.0% (p=0.921),遅発穿孔率 0.4% vs. 0.8% (p=0.872)と両群間での有意差は認めなかった.T1癌の頻度は13.7% vs. 13.0% (p=0.770) と有意差はなく,追加外科手術施行率は0.8% vs. 6.9% (p<0.001) と有意差を認めた.なお80歳以上の非手術例において検索範囲内で局所再発/現病死は1例も認めていない.
【結論】高齢者の大腸ESDは種々の手技の工夫により非高齢者と比較し,結腸病変例および抗血栓薬内服例が有意に高かったが偶発症を含む治療成績に差異は認めなかった.現在治療工夫の変遷による時期別検討を施行中である.
【方法】本研究は単施設後方視的検討である.対象は2010年1月から2025年3月に当院で大腸ESDを施行した1911例中で長径20mm未満を除いた1671例とした.抗血栓薬内服などを含む患者背景,治療成績などについて解析を行った.
【結果】全1671例中,80歳以上の高齢者255例と65歳未満の非高齢者509例を抽出し検討した.患者背景は平均年齢 83.3±3.0 vs. 55.5±7.9 (p<0.001),性別(男性比) 52.9% vs. 53.8% (p=0.816),抗血小板薬内服 25.9% vs. 3.3% (p<0.001),抗凝固薬内服 9.8% vs. 1.4% (p<0.001)であった.病変部位(右側, 左側, 直腸)および腫瘍径(mm) 34.3 ± 18.6 vs. 32.5 ± 15.1 (p=0.096)であり, 腫瘍形態(隆起型) 12.9% vs. 20.4% (p=0.010) は有意差を認めた.治療成績はESD施行時間(分) 72.9±50.8 vs. 71.9±52.4 (p=0.393), 一括切除率 96.9% vs. 98.4% (p=0.154),術中穿孔率 2.4% vs. 3.3% (p=0.451),後出血率 1.6% vs. 2.0% (p=0.921),遅発穿孔率 0.4% vs. 0.8% (p=0.872)と両群間での有意差は認めなかった.T1癌の頻度は13.7% vs. 13.0% (p=0.770) と有意差はなく,追加外科手術施行率は0.8% vs. 6.9% (p<0.001) と有意差を認めた.なお80歳以上の非手術例において検索範囲内で局所再発/現病死は1例も認めていない.
【結論】高齢者の大腸ESDは種々の手技の工夫により非高齢者と比較し,結腸病変例および抗血栓薬内服例が有意に高かったが偶発症を含む治療成績に差異は認めなかった.現在治療工夫の変遷による時期別検討を施行中である.