講演情報

[VSY3-5]守谷・松田式痔核結紮切除術変法の手技と術後合併症についての検討

田中 香織1, 森 俊治1, 山田 英貴2 (1.森外科医院, 2.山田外科内科)
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背景:当院では守谷・松田式痔核結紮切除術(ligation and excision : LE)変法を採用している。守谷・松田式LEの特徴は、underminingにより可及的に肛門上皮・直腸粘膜を温存しつつ痔核成分を郭清することと、内痔核を結紮した縫合糸で肛門上皮を根部結紮した部位まで吊り上げることである。これによって、術後の外痔核腫脹やskin tag形成を防止している。当院では術前のデザインを大切にしており、LE間の肛門上皮が十分に残るように切離ラインをあらかじめマーキングしている。また肛門皮膚の切離および外痔核の剥離を電気メスで行い、出血が少ない視野で括約筋上に存在する痔核成分をすべて切除するようにしている。この術式は手間がかかるため手術時間が長くなり,広く汎用されているとは言い難いが,全周性の巨大痔核にも対応でき、整容性が高く、有用性は非常に高いと考える.しかし、LE後には、便秘や便失禁などの排便障害をきたす症例が散見される。また尿閉や術後出血、術後疼痛など、排便障害以外の症状を呈する症例も多い。そこでLEの個数に着目し、排便・排尿障害を含めた術後合併症について調べてみた。
方法:2021年1月から2024年12月までに、当院で施行したLE444例のうち、治癒確認まで可能であった386例を対象に、術後合併症について検討を行った。検討項目は、浣腸、緩下剤、刺激性下剤使用の有無、便失禁、肛門狭窄の有無、導尿の有無、痛みスケールの推移についてであり、LEの個数によって2群間に分け、χ二乗検定やt検定、ANOVAを用いて検討した。
結果:LE≧2ではLE=1と比べて、またLE≧3ではLE≦2と比べて、有意に浣腸、緩下剤、刺激性下剤、導尿を必要とする症例が多く、術後にフェイススケール(FS)≦2になるまでに必要とする日数が多かった。便失禁は2例のみ術直後から術翌日にかけて認められたが、肛門狭窄を認めた症例はなかった。術後晩期出血は46例に認め、止血術を要したのは1例のみであった。
考察:LE個数が多いと、術後疼痛が強くなり、排便障害や排尿障害をきたす症例が増えると考えられた。