講演情報

[VSY3-7]安全で合併症の少ない結紮切除術を目指して

岡本 欣也1 (1.東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター, 2.ウィメンズクリニック浦和)
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結紮切除術はあらゆる形態の痔核に対応可能で、根治性の高い標準術式として確立している。しかし、血流に富む痔核組織を過不足なく切除することは決して容易ではなく、また術後肛門狭窄や晩期出血といった合併症も存在する。今回、これらの合併症を軽減し、より安全な術式を目指して行ってきた工夫を報告する。
① 痔核手術に対する意識
痔核根治術は痔核組織をすべて切除するのではなく、患者の愁訴の原因となっている病巣のみを切除するという意識を持つ。手術に際しては、どの痔核をどの程度切除すれば調和のとれた仕上がりになるかを計画し、切離線を設定する。
② 肛門上皮温存の意識(術後肛門狭窄予防)
肛門上皮の過切除は伸展性を失わせ、術後肛門狭窄の最大の原因となるため、できる限り温存するよう心がける。
③ 後方先行アプローチ法(術中出血予防)
痔核の後方の剥離を先行する。内肛門括約筋を目印に後方の剥離を進めると、ほぼ出血することなく痔核上極に到達できる。その後、粘膜面を確認しながら痔核の上極に向かって左右の粘膜を切離する。
④ 牽引固定法(晩期出血予防・再脱出予防)
痔核根部より約1.5~2 cm頭側の直腸に縫合糸を置き、痔核根部を結紮する。この操作により痔核根部は直腸方向に牽引・固定され、排便に伴う肛門側への負担が軽減される。さらに痔核根部上極の直腸に縫合を置くことで流入血管も結紮され、根部出血予防となる。また、直腸下部から肛門管の粘膜・上皮が直腸方向に牽引・固定されることにより吊り上げ効果が得られ、痔核の再脱出予防にもつながる。3か所の結紮切除を行うと3点が同時に直腸方向に牽引・固定され、より効果的である。
本発表では、痔核結紮切除術に関するこれら具体的な工夫をビデオで供覧し、その有効性を報告する。結紮切除術はGold standardであるが、術後合併症のさらなる低減は依然として重要な課題であり、今回の検討がその一助となることを期待する。