講演情報
[VWS2-8]肥満患者における局所進行直腸癌の術後短期および長期成績と手術手技の工夫
山本 健人, 肥田 侯矢, 岡村 亮輔, 板谷 喜朗, 星野 伸晃, 小濵 和貴 (京都大学医学部附属病院消化管外科)
【背景】局所進行直腸癌は手術難度が高く、不適切な術野展開や安全性を損なう手術操作は、術後合併症の増加や長期予後の悪化につながる恐れがある。本研究では、肥満患者の術後成績を報告するとともに、3種の手術支援ロボットDa Vinci Xi、Hugo、hinotoriにおいて肥満患者に対する手術手技の工夫についても動画で供覧する。
【方法】2005年から2022年に当院で治癒切除が行われた局所進行直腸癌患者(cStage II/III、Ra/Rb-P)に対象を絞り、肥満群(BMI ≥25 kg/m2)と非肥満群(BMI <25 kg/m2)に分けて短期成績および全生存率(OS)・無再発生存率(RFS)を比較した。
【結果】対象患者は373例で、男性242例、女性131例、年齢中央値は66 [21-90]歳、腫瘍の位置はRa/Rb-P; 171/202例、アプローチ法は腹腔鏡251例、ロボット支援110例、開腹12例であり、術式は低位前方切除239例、直腸切断術64例、括約筋間切除50例、ハルトマン術16例、骨盤内臓全摘4例であった。Clavien-Dindo分類 Grade II以上の術後合併症は87例(23%)に発生した。BMI 25 kg/m2以上の肥満症例は81例(22%)存在し、非肥満群と比較して男性が有意に多かったが(75% vs. 62%, P=0.024)、年齢、腫瘍の位置、術式、進行度などの患者背景に差はなかった。また、肥満群は手術時間が有意に長く(457分 vs. 331分, P <0.001)、出血量が有意に多く(75 ml vs. 30 ml, P <0.001)、術後在院日数は有意に長かった(22日 vs. 19日)(いずれも中央値)。合併症発生割合は肥満群でやや多い傾向で(29% vs. 20%, P=0.075)、術後在院日数は肥満群が中央値で3日長かった(22日 vs. 19日, P=0.035)。一方、長期予後を比較すると、cStage II/IIIいずれの進行度においてもOS、RFSともに両群間で有意差はなかった。
【結語】肥満患者では、手術時間の延長や出血量の増加、術後合併症の増加リスクが高いものの、適切な手術を行うことで、腫瘍学的な予後については非肥満患者と遜色ない結果が得られることが示唆される。
【方法】2005年から2022年に当院で治癒切除が行われた局所進行直腸癌患者(cStage II/III、Ra/Rb-P)に対象を絞り、肥満群(BMI ≥25 kg/m2)と非肥満群(BMI <25 kg/m2)に分けて短期成績および全生存率(OS)・無再発生存率(RFS)を比較した。
【結果】対象患者は373例で、男性242例、女性131例、年齢中央値は66 [21-90]歳、腫瘍の位置はRa/Rb-P; 171/202例、アプローチ法は腹腔鏡251例、ロボット支援110例、開腹12例であり、術式は低位前方切除239例、直腸切断術64例、括約筋間切除50例、ハルトマン術16例、骨盤内臓全摘4例であった。Clavien-Dindo分類 Grade II以上の術後合併症は87例(23%)に発生した。BMI 25 kg/m2以上の肥満症例は81例(22%)存在し、非肥満群と比較して男性が有意に多かったが(75% vs. 62%, P=0.024)、年齢、腫瘍の位置、術式、進行度などの患者背景に差はなかった。また、肥満群は手術時間が有意に長く(457分 vs. 331分, P <0.001)、出血量が有意に多く(75 ml vs. 30 ml, P <0.001)、術後在院日数は有意に長かった(22日 vs. 19日)(いずれも中央値)。合併症発生割合は肥満群でやや多い傾向で(29% vs. 20%, P=0.075)、術後在院日数は肥満群が中央値で3日長かった(22日 vs. 19日, P=0.035)。一方、長期予後を比較すると、cStage II/IIIいずれの進行度においてもOS、RFSともに両群間で有意差はなかった。
【結語】肥満患者では、手術時間の延長や出血量の増加、術後合併症の増加リスクが高いものの、適切な手術を行うことで、腫瘍学的な予後については非肥満患者と遜色ない結果が得られることが示唆される。