講演情報
[WS1-5]AIによる下腹神経の解剖自動認識
大橋 弥貴子, 岡林 剛史, 富田 祐輔, 門野 政義, 竹内 優志, 森田 覚, 茂田 浩平, 北川 雄光 (慶應義塾大学外科学)
【目的】S状結腸切除や直腸前方切除における内側アプローチでは、下腹神経の正確な同定が極めて重要である。下腹神経は骨盤内臓神経叢の一部を構成し、その温存は排尿機能や性機能の維持に密接に関与する。また、直腸間膜全切除(TME)を安全かつ的確に達成するためにも、神経の走行を理解した解剖学的な剥離操作が求められている。しかし、これらの神経構造は白色のために視認性に乏しく、不慣れな術者にとっては術中に早期かつ正確に同定することは困難である。近年では人工知能(AI)の進歩により、画像認識技術を活用した術中支援の試みが各分野で進んでおり、下腹神経の同定への応用も試みられている。われわれは新しいアルゴリズムを利用した手術支援AIの開発を行っている。今回開発の現状を報告し、手術支援AIによる下腹神経の自動認識の精度を評価することを目的とした。
【方法】腹腔鏡下あるいはロボット支援下に内側アプローチを行っている手術動画から2151枚の静止画像を抽出し、下腹神経の走行を対象にアノテーションを実施した。アノテーションは、2名の外科医(うち1名は内視鏡外科技術認定医・大腸肛門病外科専門医)が神経の走行を確認し、剥離のメルクマールとならない結腸枝は除外した。構築したAIモデルの精度評価には、Intersection over Union(IoU)およびF値(Dice係数)を使用した。
【結果】構築されたAIモデルのIoUは0.180、F値は0.317と算出された。オーバーレイした画像を肉眼的に観察した範囲では、下腹神経は概ね認識できていた。
【考察】本モデルは、限定的な症例数で構築されたにもかかわらず、下腹神経の自動認識が一定程度可能であることを示した。今後は、症例数の増加やアノテーション精度の向上を行い、性能改善を行う予定である。更に、本モデルを術中のリアルタイム支援や術者教育のツールとして応用し、大腸外科手術の安全性の向上および標準化への一助となると考えられた。
【方法】腹腔鏡下あるいはロボット支援下に内側アプローチを行っている手術動画から2151枚の静止画像を抽出し、下腹神経の走行を対象にアノテーションを実施した。アノテーションは、2名の外科医(うち1名は内視鏡外科技術認定医・大腸肛門病外科専門医)が神経の走行を確認し、剥離のメルクマールとならない結腸枝は除外した。構築したAIモデルの精度評価には、Intersection over Union(IoU)およびF値(Dice係数)を使用した。
【結果】構築されたAIモデルのIoUは0.180、F値は0.317と算出された。オーバーレイした画像を肉眼的に観察した範囲では、下腹神経は概ね認識できていた。
【考察】本モデルは、限定的な症例数で構築されたにもかかわらず、下腹神経の自動認識が一定程度可能であることを示した。今後は、症例数の増加やアノテーション精度の向上を行い、性能改善を行う予定である。更に、本モデルを術中のリアルタイム支援や術者教育のツールとして応用し、大腸外科手術の安全性の向上および標準化への一助となると考えられた。