講演情報

[WS1-7]大腸診療におけるAI・DXの活用と克服すべき課題

三吉 範克1,2, 藤野 志季1,2,3, 竹田 充伸1, 関戸 悠紀1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 荻野 崇之1, 植村 守1, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学消化器外科, 2.大阪国際がんセンター, 3.市立伊丹病院)
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近年、音声認識や画像認識、翻訳アプリなどの分野で人工知能(AI)の進歩が著しく、日常生活は大きく変化している。医療分野でもAIの導入が進み、基礎研究では遺伝子発現解析、臨床では病気の診断支援などへの応用が広がっている。
当グループでは、下部消化管手術におけるAI技術の活用として、術前の画像検査データから疾病の診断や進行度の予測、手術動画から機器や遺物を検出するシステムの開発、至適な切離領域の可視化など、AIの実臨床応用に向けた取り組みを進めている。術中には、ウェアラブルデバイスを用いた3D画像シミュレーションにより、断層モデルをホログラム化する技術を開発し、拡大手術や2チームアプローチなど複雑な手技への応用に向け、プログラミングや解析チームと連携してデバイス開発を行っている。
また、診療全体へのAI導入として、Society 5.0の実現を目指す内閣府プロジェクト「AIホスピタル」や「BRIDGE」にも参画してきた。画像診断・予測技術の応用、解析データの術中描出、AR・MRによる3Dデータ活用、術中ナビゲーション、手術動画における物体検出など、手術支援技術の開発と実装を推進している。加えて、VRやMRを活用した臨床実習の導入も始めている。
医工連携では、電子カルテを基盤とした医療情報の統合によりDXを推進し、患者・家族・医療従事者すべてに有益なプラットフォーム構築を目指している。たとえば、手術説明や外来での栄養評価へのAI活用など、コメディカルとの連携を含めた包括的な医療DXを展開中である。
さらに基礎研究では、臨床情報に基づく疾患や合併症の発生予測AIモデルの構築を行い、多施設データベースの運用へと拡張している。
今後は、ロボット手術に象徴される技術革新とAIを融合し、膨大な医療情報をいかに活用するかが問われる。本発表では、AI・DXの強みを活かした取り組みを紹介し、大腸診療の未来像を展望する。