講演情報
[WS2-5]他科(血液内科、透析科、消化器内科)との連携の特殊性と苦慮する肛門疾患
小野寺 一彦, 高橋 宏明, 堀江 卓, 山内 暉眞, 宮下 秀隆 (社会医療法人北楡会札幌北楡病院肛門外科)
【背景と目的】特殊な病態を伴う肛門疾患では診療が制限される。当院で多い血液悪性疾患、維持透析、下血~肛門出血の患者を検討した。
【対象と方法】 2024年までの10年間に当科を受診した ①. 悪性血液疾患患者670名、 ②. 透析患者125名、③. 2024年までの5年間に下血~肛門出血で消化器内科と肛門外科の間で紹介した83名を集計した。
【結果と考察】①. 悪性血液疾患患者では診察時裂肛と診断される患者が26%と多く、化学療法による下痢で裂肛を発症すると推察された。手術は内痔核硬化療法23、裂肛根治術9、痔瘻根治術9、肛門周囲膿瘍切開9、脱肛根治術5例であったが、手術できる時期は血球数の安定したときに限定された。造血幹細胞移植前の肛門感染症スクリーニング診察(211例)時に手術適応疾患が見つかっても、優先される移植までの期間が短いため移植前に手術できたのは稀だった。発熱性好中球減少症(膿が作られない)に合併した肛門周囲蜂窩織炎では切開ドレナージした21例と切開しなかった36例を比較すると、切開は疼痛改善には有効であった。
②. 透析患者での疾患の内訳は、内痔核47、肛門周囲膿瘍25、裂肛16、血栓性外痔核7、直腸潰瘍7、痔瘻6、肛門ポリープ4、壊死性筋膜炎2、その他11例であり、非透析患者に比べ肛門周囲膿瘍と壊死性筋膜炎の割合が高かった。ALTA療法は禁忌のため原則的に選択されなかった。壊死性筋膜炎では2例とも糖尿病を合併しており1例が術後早期に死亡した。透析患者には血管合併症が多く抗血栓薬使用例が多いため麻酔法が限定された。
③. 消化器内科から肛門外科への紹介にはトリアージも含まれるが結果的に57%が肛門疾患であった。逆に肛門外科から肛門鏡検査後に消化器内科に紹介した53名の最終診断で肛門疾患のみだったのは11%で精度は高かった。
【結語】 ①. 免疫能低下や血小板減少など血液疾患の病態により手術時期は限定された。
②. 透析患者ではALTA療法が禁忌のため治療法が制限された。
③. 消化管出血の中には一時的治癒が早いわりに出血が反復する粘膜病変もあり、出血性肛門疾患が合併している場合には対応に苦慮した。
【対象と方法】 2024年までの10年間に当科を受診した ①. 悪性血液疾患患者670名、 ②. 透析患者125名、③. 2024年までの5年間に下血~肛門出血で消化器内科と肛門外科の間で紹介した83名を集計した。
【結果と考察】①. 悪性血液疾患患者では診察時裂肛と診断される患者が26%と多く、化学療法による下痢で裂肛を発症すると推察された。手術は内痔核硬化療法23、裂肛根治術9、痔瘻根治術9、肛門周囲膿瘍切開9、脱肛根治術5例であったが、手術できる時期は血球数の安定したときに限定された。造血幹細胞移植前の肛門感染症スクリーニング診察(211例)時に手術適応疾患が見つかっても、優先される移植までの期間が短いため移植前に手術できたのは稀だった。発熱性好中球減少症(膿が作られない)に合併した肛門周囲蜂窩織炎では切開ドレナージした21例と切開しなかった36例を比較すると、切開は疼痛改善には有効であった。
②. 透析患者での疾患の内訳は、内痔核47、肛門周囲膿瘍25、裂肛16、血栓性外痔核7、直腸潰瘍7、痔瘻6、肛門ポリープ4、壊死性筋膜炎2、その他11例であり、非透析患者に比べ肛門周囲膿瘍と壊死性筋膜炎の割合が高かった。ALTA療法は禁忌のため原則的に選択されなかった。壊死性筋膜炎では2例とも糖尿病を合併しており1例が術後早期に死亡した。透析患者には血管合併症が多く抗血栓薬使用例が多いため麻酔法が限定された。
③. 消化器内科から肛門外科への紹介にはトリアージも含まれるが結果的に57%が肛門疾患であった。逆に肛門外科から肛門鏡検査後に消化器内科に紹介した53名の最終診断で肛門疾患のみだったのは11%で精度は高かった。
【結語】 ①. 免疫能低下や血小板減少など血液疾患の病態により手術時期は限定された。
②. 透析患者ではALTA療法が禁忌のため治療法が制限された。
③. 消化管出血の中には一時的治癒が早いわりに出血が反復する粘膜病変もあり、出血性肛門疾患が合併している場合には対応に苦慮した。