講演情報
[WS3-1]当科における人工肛門閉鎖術までを考えた回腸人工肛門造設術の工夫
藤野 紘貴, 岡本 行平, 豊田 真帆, 秋山 有史, 伊東 竜哉, 小川 宰司, 今村 将史, 奥谷 浩一 (札幌医科大学外科学講座消化器外科分野)
【はじめに】近年、経肛門手術の併用など技術の進歩により低位直腸癌における肛門温存手術が増加している。一方で、直腸癌手術において縫合不全は10%前後に発生するとされており、短期・長期成績に大きく影響する因子である。縫合不全を回避するため一時的回腸人工肛門造設を併施することは有用である。また、人工肛門閉鎖術は癒着剥離、腸間膜処理、腸管吻合といった若手外科医が手技を取得する貴重な機会となりうるが、広範な癒着などを伴うと難渋することもある。そこで当科における人工肛門閉鎖術を見越した人工肛門造設術の手技を報告する。【造設手技】人工肛門造設部位は回腸末端から30cmとし、挙上腸管に全周性に癒着防止剤を貼付する。ストーマサイトマーキングに沿って皮膚を縦切開し開腹、腸管を自然な向きで挙上する。腹壁の固定は不要あるいは最低限とする。【閉鎖手技】人工肛門をあらかじめ皮下に埋没するように閉鎖する。全周性に癒着を剥離し腸管を挙上する。腸管切離ラインを設定し、間膜の血管は結紮切離とする。吻合はFEEA2発法にて吻合し腹腔内へ還納する。閉腹したのちに十分に創を洗浄し皮膚は真皮埋没縫合にて1期閉鎖とする。【対象】2019年1月から2025年3月までに当科において一時的回腸人工肛門を閉鎖した296例【結果】原疾患は直腸癌242例、直腸腫瘍7例、結腸癌6例、大腸全摘後10例、消化管穿孔8例、その他23例であった。造設時の手術アプローチはロボット手術224例、腹腔鏡47例、開腹25例で造設部位は右下腹部207例、右上腹部72例、左上腹部1例、左下腹部5例、臍部11例であった。期間内の縫合不全は5例(1%)のみで、回腸人工肛門による合併症はoutlet obstruction 8例であった。人工肛門閉鎖術の手術時間78分、癒着剥離に要した時間は24分であった。術後在院日数は12日で術後SSIは15例(5%)、他CD3以上の合併症は11例(イレウス5例、腸閉塞2例、敗血症性ショック1例、腸管壊死1例、多臓器損傷1例、胆汁漏1例)であった。造設から閉鎖までの期間は202日であった。【結語】人工肛門造設から閉鎖までを定型化することで安全に手術を施行することが可能であった。文献的考察および当科の手技を供覧し報告する。