講演情報

[WS3-6]回腸人工肛門造設を伴う直腸癌術後にoutlet obstructionを来した症例の検討と手技の工夫

根岸 宏行1, 内藤 正規1, 勝又 健太1, 小川 敦博1, 西澤 一1, 天野 優希1, 臼井 創大1, 中野 浩1, 大坪 毅人2, 民上 真也2 (1.聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院消化器・一般外科, 2.聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科)
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【はじめに】直腸癌の肛門温存手術の普及とともに一時的回腸人工肛門造設術を行う症例が増加している。縫合不全のリスク軽減に有用である一方で、High output stoma (以下HOS) やOutlet obstruction(以下OO)といった合併症をきたすこともある。今回、直腸癌に対し一時的回腸人工肛門造設を行った症例に対し、OOについてのリスク因子について検討した。また、腹直筋前鞘と腸管壁の固定の有無による術後短期成績を検討し、OOの予防が可能となる至適な回腸双孔式人工肛門造設の手技を確立することを目的とした。【対象】2015年1月から2023年12月までに直腸癌手術の際に一時的回腸人工肛門造設を造設した46例について検討した。OOを来した症例5例をOO群、OOを来さなかった41例を対照群とした。また、腹直筋前鞘と腸管漿膜の固定による腹壁内での屈曲が生じることでOOが発症する可能性を考え、2021年6月より漿膜と前鞘との固定を行わないこととした。【結果】OO群において年齢の中央値は65歳(61−87)、男女比は5:0であった。術前のプレアルブミンの中央値は24.9mg/dL(19.3-34.9)、小野寺PNIの中央値は53.0(40.8-54.9)であった。手術時間の中央値は288分(230−477)、出血量の中央値は61ml(5−75)であった。1例は絶食のみで改善が認められた。4例はストマからのカテーテル挿入を行い改善が得られた。対照群において年齢の中央値は67歳(35−89)、男女比は29:12であった。術前のプレアルブミンの中央値は24.3mg/dL(8.4-46.7)、小野寺PNIの中央値は46.5(19.2-57.5)であった。手術時間の中央値は280分(159−401)、出血量の中央値は32ml(5−1088)であった。年齢、男女比、術前プレアルブミン、小野寺P N I、手術時間、出血量に有意差を認めなかった。有意差はなかったが、OO群はいずれも男性であった。また、漿膜と前鞘との固定を行わなかった16例にOOは認めなかった。【まとめ】今回の検討ではOOのリスク因子として明らかなものは認めなかったが、腹直筋前鞘と腸管漿膜の固定により腹壁内での屈曲が生じることでOOが発症する可能性が示唆された。回腸人工肛門造設におけるOOのリスク因子について、若干の文献的考察を含めて報告する。