講演情報

[WS4-6]若年痔瘻患者に対するクローン病鑑別のための精査に関する検討

高野 正太 (大腸肛門病センター高野病院)
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【はじめに】クローン病に合併した痔瘻は根治手術の適応ではなく、ドレナージを行った後の各種薬物療法が行われるため若年者、特に10代の痔瘻患者ではクローン病を鑑別することが重要となる。今回当院における若年痔瘻患者に対する精査を後ろ向きに検討した。
【方法】当院では若年痔瘻患者に対して単純単発痔瘻であれば、まず腹部超音波検査を行う。腸管壁肥厚などの有意な所見がある場合、または痔瘻が複雑、多発、深部である場合は全大腸内視鏡検査、上部消化管内視鏡、小腸透視を行なう。上記検査で所見はあるが確定診断に至らない場合は小腸カプセル内視鏡を行う。2021年1月から2025年2月までに当院で上記精査を行った10代の痔瘻患者82例について検討した。
【結果】10代痔瘻68例全例に腹部超音波検査を行った。全大腸内視鏡は32例、上部消化管内視鏡28例、カプセル内視鏡は14例に施行。68例中9例(13.2%)においてクローン病が確定診断された。クローン病が診断された症例では根治手術は行わず、生物学的製剤などが投与され、1例はダルバドストロセル注入が行われた。クローン病と診断されなかった59例のうち36例で根治術が行われ、残りの23例では経過観察となっている。
【まとめ】若年痔瘻患者ではクローン病を鑑別することが重要だが、10代の患者では全大腸内視鏡や上部消化管内視鏡は体への負担となるため、その検査の有用性を吟味しつつ慎重に適応を検討する必要がある。腹部超音波検査など侵襲の低い検査を用いることによって負担の軽減が望まれる。