講演情報

[WS5-8]NCDデータを用いた大腸癌手術の実態と術後成績の規定因子の検討:内視鏡外科技術認定医評価と高齢者手術リスクの二方向からの解析

赤木 智徳1, 上田 貴威2, 長谷川 巧1, 小山 旅人1, 岳藤 良真1, 藤田 隼輔1, 青山 佳正1, 皆尺寺 悠史1, 一万田 充洋1, 蔀 由貴1, 平塚 孝宏2, 河野 洋平1, 二宮 繁生1, 柴田 智隆1, 白下 英史3, 衛藤 剛4, 猪股 雅史1 (1.大分大学消化器・小児外科, 2.大分大学総合外科・地域連携学講座, 3.大分大学高度医療人育成講座, 4.大分大学グローカル感染症研究センター)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景】大腸癌に対する外科治療の質の向上と個別化を目指す上で、全国規模のリアルワールドデータの活用が不可欠となってきた。National Clinical Database(NCD)は日本全国の95%以上の手術症例を網羅しており、術者要因や患者背景を含めた多面的評価が可能である。【目的】本研究では、NCDを用いた2つの研究成果を紹介し、術者資格の有無や患者高齢化といった視点から、手術アウトカムに影響を及ぼす因子を検討した。【対象と方法】①2014~2016年にNCDに登録された直腸前方切除を受けた症例を対象とし、内視鏡外科技術認定(ESSQS)の有無による短期成績を比較。②2017~2020年に右半結腸切除および低位前方切除を受けた85歳以上の患者11,635例(RH: 9,264例、LAR: 2,371例)を対象とし、Clavien-Dindo分類Grade 3以上の合併症のリスク因子を多変量解析にて検討。【結果】①ESSQS認定医が執刀した群では吻合不全の発生率が低下(LDG: OR=0.835, P=0.014)し、一定の質の担保が示唆された。②高齢者群では、RHでの重篤な合併症率は5.2%、LARでは8.7%であった。リスク因子として、RHでは男性、ADL低下、高血圧、低Na、血小板減少、PT-INR延長、LARではASA-PS≧3、既往肺炎、クレアチニン高値、低Naが同定された。【考察】2つの研究は、いずれもNCDを活用し、術者因子と患者因子の両側面から大腸癌手術の質と安全性を検討しており、今後の標準的手術指標の策定や高齢者への個別最適化医療の展開に有用である。【結論】全国データベースを用いた大腸疾患研究は、RCTでは捉えきれないリアルワールドの課題や有効性、安全性を明らかにしうる強力な手段である。今後さらなる多面的解析と臨床応用が期待される。