講演情報

[WS6-1]当院における大腸憩室炎の治療成績と手術適応に関する検討

黨 和夫, 深野 颯, 大野田 貴, 原 亮介, 内田 史武 (NHO嬉野医療センター消化器外科)
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【緒言】大腸憩室炎は、急性に発症して穿孔や膿瘍により汎発性腹膜炎を呈するものや、慢性に経過して瘻孔や狭窄を呈するものなど多彩な臨床像を呈する。【目的】当院における大腸憩室炎治療の現状を評価し、手術症例と保存的治療症例の差異を明らかにすることを目的とした。さらに手術症例において開腹手術と腹腔鏡下手術の差異を検証した。【対象と方法】2014年1月から2024年12月までの11年間に当科で経験した大腸憩室炎症例は266例であった。保存的治療群が204例で手術治療群が62例で、2群間の比較検討を行った。また、手術治療群を開腹群40例と腹腔鏡群22例に分け周術期の各種パラメータを比較検討した。【結果】保存的治療は年間20例前後で、97%がHinchey stageIで、23%が再発症例で、平均在院日数は約9.5日であった。Hinchey stageIの手術症例は、上行結腸の102例中、4例(4%)のみであったが、S状結腸では68例中、27例(40%)であった。手術治療群と比較し、保存的治療群は有意に年齢が若く、Hinchey stage I/IIの割合が多く、右側結腸が多かった。また保存的治療群は有意に基礎疾患、糖尿病が少なく、初診時のアルブミン値が低かった。予後と合併症のマーカーでは、手術治療群でPNIとCONUT scoreが有意に不良であった。憩室炎手術症例62例の内訳は憩室炎(炎症、穿孔、膿瘍)が50例、膀胱瘻が7例、狭窄が5例であった。部位はS状結腸が50例と80%以上を占めていた。開腹群と腹腔鏡群で、年齢とBMI、病変部位、基礎疾患に差はなかった。開腹群と比較して、腹腔鏡群は有意に年齢が低く、Hinchey stage I/IIが多く、待機的手術が多く、ストマ造設率が少なかった。また、初診時のCRP値が低く、術後在院日数が短かった。術後合併症は開腹群で多い傾向があったが有意差はなかった。腹腔鏡群で有意に手術時間が長く、出血量が少なかった。開腹群でTRPとCONUT score、TRPが有意に不良であった。【結論】Hinchey分類は憩室炎の病態を把握するのに簡便な分類であるが、左側結腸ではstageIでも手術例が多く重症度と一致しなかった。憩室炎の手術適応に関して、PNI, TRP, CONUT scoreを組み合わせて評価することは有用である可能性がある。