講演情報

[WS6-3]左側結腸憩室炎に対する待機的手術成績の検討

井上 悠介, 肥田 泰慈, 山下 真理子, 橋本 慎太郎, 片山 宏己, 山口 峻, 高村 祐磨, 足立 利幸, 富永 哲郎, 野中 隆 (長崎大学大学院外科学講座大腸・肛門外科)
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【はじめに】慢性の結腸憩室炎では周囲との癒着や、瘻孔形成等により他臓器損傷のリスクが高い。また、左側大腸切除・吻合時の縫合不全率は15%程度と非常に高いと言われており、治療戦略の構築が重要である。
【目的】左側結腸憩室炎に対する待機的手術の治療成績を検討すること。
【対象と方法】2009年8月~2025年4月までに左側結腸憩室炎に対して待機手術を行った22例に関して、患者因子、術前・術中・術後因子を後方視的に検討した。
【結果】男15:女7、年齢中央値63歳(38‐79)、BMI中央値22.9(18.1‐33.3)、基礎疾患として、呼吸器疾患1/22、心疾患1/22、糖尿病3/22、喫煙歴7/22、CKD(eGFR<60)6/22であった。待機手術の術前dataはWBC 5900μ/L(3800‐10200)、CRP 0.31mg/dL(0.02‐4.83)、ALB 4.3g/dL(2.8‐4.7)、瘻孔形成症例は11例で全て膀胱と瘻孔を形成しており、6例は根治術前に人工肛門が造設されていた。手術はOpen5:Lap17で行われており、Clavien-Dindo分類Ⅲ以上の合併症は3例に認め、全て縫合不全であった。近年は蛍光尿管ステントの留置が多く行われており、尿管をはじめとした術中の他臓器損傷は認めなかった。統計学的に縫合不全を来たす有意な因子は同定できなかったが、3例とも術前に人工肛門が造設されておらず一期的根治術を予定した症例であった。
【結語】左側結腸憩室炎に対する待機的な手術では人工肛門造設が縫合不全のリスクを減らせる可能性があり、術前人工肛門造設もしくはdiverting stoma造設を積極的に検討すべきである。