講演情報

[WS6-5]S状結腸憩室炎に対する手術戦略の検討:穿孔・穿通および結腸膀胱瘻症例の後方視的解析

永井 雄三, 白鳥 広志, 岡田 聡, 舘川 裕一, 品川 貴秀, 原田 有三, 横山 雄一郎, 江本 成伸, 室野 浩司, 佐々木 和人, 野澤 宏彰, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
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【目的】S状結腸憩室炎は本邦でも増加傾向にあり、その病態は多岐に及ぶ。当科における手術例を解析し、治療戦略の妥当性を検討した。
【方法】2014-25年のS状結腸憩室炎手術症例計68例のうち、主な手術適応である①穿孔・穿通41例、および②結腸膀胱瘻20例を中心に治療成績を後方視的に検討した。
【結果】穿孔・穿通41例のうち、穿孔(19例)は全例緊急手術、穿通(22例)は6例が緊急手術、16例が保存的加療後に手術を要した。術式はハルトマン手術を原則とし、計31例に施行した。一方、穿通に対する保存的加療後16例中、7例に腸管切除・吻合を行い、縫合不全は認めなかった。3例は全身状態不良でストマ造設のみ施行した。ハルトマン手術後、腸管再建手術は17/31例(54.8%)に実施した。実施困難な要因は高齢・全身状態不良、担癌状態、長期ステロイド内服歴などであった。穿孔・穿通例におけるCD分類Grade2以上の術後合併症は17例(31.7%)で、腹腔内膿瘍が6例と最多であった。周術期死亡は認めず、多変量解析では年齢(75歳以上)が独立危険因子であった。
 結腸膀胱瘻20例は全例待機的手術であり、注腸造影および膀胱鏡検査がルーチンに施行されていた。全例S状結腸切除・吻合を行い、縫合不全は認めなかった。近年は腹腔鏡下手術を積極的に行っており、11例中1例で開腹移行を要したが、開腹と比較して出血量は有意に少なかった(平均65 vs 276 ml, P=0.008)。17例に術前尿管ステントを留置、特に直近6例は蛍光尿管ステントを使用し術中ICGスコープで尿管の良好な視認性が得られた。近年は瘻孔部を剥離後、膀胱リークテスト陰性であれば膀胱の縫合閉鎖は省略としており、計11例において尿路関連の合併症は認めなかった。Grade2以上の術後合併症は5例(25.0%)で、腹腔内膿瘍が2例と最多であった。
【結語】穿孔・穿通例ではハルトマン手術を基本としつつ、保存的加療後の穿通例では症例選択的に腸管切除・吻合も可能と考えられた。高齢者は術後合併症の発生に十分な注意を要することが示唆された。結腸膀胱瘻例では、蛍光尿管ステントの活用や膀胱処理の簡略化が腹腔鏡下手術の円滑な遂行に寄与する可能性が示唆された。