講演情報

[SY1-02]ウクライナ避難民に対する医療支援活動

*稲葉 基高1,2 (1. ピースウィンズ・ジャパン、2. 岡山大学救命救急災害医学講座)
2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して以来、多くの市民が避難を余儀なくされた。ピースウィンズ・ジャパンは、隣国モルドバやウクライナ国内で避難民に対する医療支援を行い、彼らの健康と安全を守るために尽力してきた。2022年4月から9月にかけて隣国モルドバの首都キシナウにおいて、唯一のアジアからの医療チームとして約1600名の避難民の診療を実施。国際EMTとしてモルドバ保健省やキシナウ市、WHO-EMTCC等のステークホルダーとの密な連携により支援活動が可能となった。診療内容には、慢性疾患の管理、生活環境による皮膚トラブルや感染症の治療、避難生活によるストレス症状の緩和などが主であった。診療録を後方視的に解析した結果、侵攻からの時期と受診患者の血圧の値に有意な関連を認め、戦時下のストレスが避難民の血圧に深刻な影響を与えていることが示唆された。一方ウクライナ国内では、現地医療機関、NGOと連携して、住民の退避支援や医療機関への薬剤提供、医療機器の支援、妊産婦支援などを現在も行っており、避難民や被災者の健康を守る努力を続けている。現在、紛争はウクライナだけに限らない。日本での報道も減る中、医療に限らず支援の継続が重要である。戦時下の不安定な状況に対応するためには、柔軟な支援体制が不可欠であるとともに、世の中の紛争に意識を向け続けることも支援の一つであると考える。これまでの活動を報告するとともに、得られた教訓を共有する。