水文・水資源学会 日本水文科学会2026年度研究発表会

特別講演会「森林生態系の光合成機能を測る〜高山サイトでの長期・複合的な観測より〜」

日 時:2026年9月15日(火) 

講演者:村岡裕由(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授,国立環境研究所 生物多様性領域 グループ長)

略歴:筑波大学環境科学研究科(1996年),生物科学研究科(1999年)修了。博士(理学)。
2000年から岐阜大学・高山サイトをフィールドとして,森林植物の光合成の環境応答に注目して個葉から個体,生態系に至るスケール横断研究を多くの共同研究者と進めている。国内外の長期生態学研究ネットワーク(JaLTER)や生物多様性観測ネットワーク(APBON)とも連携。2005年より岐阜大学流域圏科学研究センター・助教授,2008年より教授,2025年より東京大学にて現職。岐阜大学名誉教授。一般社団法人日本生態学会理事。文部科学省科学官。

趣旨:気候変動,生物多様性の損失,環境汚染は地球規模での環境問題であり,森林生態系の多面的機能の持続可能性はこれらのいずれにも関わる課題である。植物の光合成や蒸散などの生理生態学的プロセスは森林の生態系機能の基盤であり,広範な時間スケールでの環境変動の影響を受けやすいことが今では世界中で詳細なデータによって示されている。それではこうした知見は,どのような研究によって蓄積されているのだろうか,そしてこれからどのような研究が必要とされるだろうか?講演者は「高山サイト」をフィールドとして多くの共同研究者と協力しながら,さまざまな手法や技術をつかって「森林の光合成を測り,その変動メカニズムを理解し,予測する」研究を展開してきた。落葉広葉樹林内に高さ約18mのタワーを建設し,林冠木から林床植生まで,個葉や葉群の光合成能やフェノロジー,分光特性,森林のCO2フラックスを観測し,炭素循環モデルを用いて統合的なメカニズム解明を進め,また,衛星リモートセンシングデータを用いた時間的・空間的変動の推定に取り組んできた。またこれらの研究活動は全国規模での研究ネットワークJaLTER,JapanFlux)などとも連携して進められ,生態系スケールを横断する研究の発展や人材育成に繋がってきた。本講演では森林生態系の長期複合的観測によって分かってきたこと,できるようになったこと,そしてこれから必要とされることについて話し,皆さんと意見を交換したい。

写真:岐阜大学高山試験地生態観測櫓